「訓練受けたのか?」…市民に広がる不安
韓国で警察官の現場対応が問題視される事態が相次ぎ、市民の間で不安の声が上がっています。直近に起きた事件とあわせて、現状を整理してみました。(シリーズ1/3)
◇「まるでコント」
先月30日午前2時16分、韓国全羅南道麗水の交番を、覆面姿の男が「エアボウ(airbow)」(矢を撃つ銃)で襲撃した。矢はアクリル板に刺さり、けが人は出なかった。男は2分ほど交番にとどまり、その後、逃げた。
当時、交番には警察官7人が勤務していたが、犯人確保どころか、驚いて身を隠したまま、10分たっても動かなかった。そればかりか、身を隠したまま携帯電話で「112番」(日本の110番)に通報するという状況だった。
その後、約50人の警察官が出動し、交番周辺を捜索したが犯人検挙には至らなかった。結局、12時間後、容疑者(22)は交番から5キロ離れた自宅で逮捕されたという――。
この事件は韓国社会に大きな波紋を投げかけ、「まるでコント」「赤っ恥」という批判が巻き起こった。警察官7人が身を隠している間、容疑者は武器を持って街を自由に歩き回ったという。罪のない市民が負傷しかねない状況で、非難が広がった。
◇「初動不十分」
警察のずさんな対応は今回が初めてではない。
昨年11月15日、仁川市(インチョンク)南洞区(ナムドンク)のあるマンションで、騒音をめぐるトラブルが発生した。当時、40代の男が凶器を振り回し、隣家の住民3人に大けがを負わせていた。この時、警察官2人が出動したものの、男を制止したり、被害者を保護したりしないまま現場を離れるという事態も発生している。当時、警察官は拳銃や警棒、テーザー銃を持っていた。
警察の初動対応が不十分だったという批判が殺到し、2人はその後、解任された。
キム・チャンリョン警察庁長官(当時)は声明を通じて「国民の生命と安全を守ることは警察の最も重要な使命である。にもかかわらず、危険に直面した国民を守れなかった今回の事件に関し、被害者とその家族、そして国民の皆様に深く謝罪の言葉を申し上げる」と頭を下げた。
◇「警察官の命は、二つも三つもあるのか」
こうした失態が毎年のように繰り返され、市民の間では警察に対する不信感が高まっている。
「警察も人間なので怖かったのだろうが、それでもこれは市民が考える警察の姿ではない。訓練を受けているのか疑わしい」(麗水市民)
「訓練や対応不足ではないか。警察で対応できなければ、一般市民が路上であのような犯罪者に出くわした場合、どのようにすればいいのだろうか。警察のずさんさは、すなわち市民の不安だ」(30代会社員)
あるネットユーザーは、オンラインコミュニティで、警察官が携帯電話で112番に通報したことについて「消防士が消防署に『火事が起きた』と119番に通報するのと同じではないか」と皮肉った。
ただ、一部では理解できる、という反応もある。
奇襲された状況において、武装していない警察官が取ることのできる措置は事実上、ないということだ。「相手は銃を持っている。映画でもないのに、素手でどうやって防げるだろうか」(30代市民)という見方だ。
また、別のネットユーザーも「消防士も素手で火を消すわけではない。消防士が手に何も握っていない状況と似ている。消防士と比較するのは意味がない」と警察を擁護した。
会社員匿名コミュニティである「ブラインド」の警察庁掲示板にも、次のように記されている。
「警察学校では警察官自らの安全が最優先だと学ぶ。本質は『警察がテロに遭い、そこにいた警察官はテロに遭った被害者だ』ということ。警察官の命が二つも三つもあるのか」
(つづく)
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