◇金海空港、サークリングアプローチと鳥類衝突のリスク
昨年12月29日の済州航空航空機事故以前に韓国で発生した航空事故の中で最も多くの死者を出したのは、2002年4月15日に発生した中国国際航空のボーイングB767-200ER機による事故だ。金海国際空港への着陸を試みた際、慶尚南道金海市の山に墜落した。この事故では、乗員を含む166人が搭乗しており、乗務員含む130人が死亡し、36人が救助された。
◇中国国際航空機墜落、難易度の高いサークリングアプローチが原因
金海空港には、民間用の3200m滑走路(18R/36L)と軍用の2744m滑走路(18L/36R)の2本が存在する。航空機は着陸時、向かい風を受けながら着陸する。追い風が吹くと、着陸距離が長くなるためだ。
金海空港に着陸する航空機は通常、海側から金海平野を望みつつ、計器着陸装置(ILS)の誘導に従って接近する。しかし、4月から8月にかけて南風が強く吹くと、海側から進入して滑走路を視界に捉えた後、滑走路を回り込むように時計回りで旋回し、滑走路の北側から南向きに接近しなければならない。
これを「サークリング旋回着陸(アプローチ)」と呼ぶ。
他の空港では、南風が強い場合、最初から北側から接近すれば済むが、金海国際空港では滑走路北側に山が二つあるため、このような着陸方法を取らざるを得ない。
パイロットはサークリング旋回着陸をする際、滑走路を目視しながら着陸を試みる必要があるため、天候が良好であることが条件となる。気象状態が悪い場合、着陸は不可能だ。雲高1100m、視程4800m以上の状況でのみ着陸が可能となる。
また、使用可能な機種もエアバスA330やボーイングB767などDクラスの航空機に限定される。
中国国際航空の墜落事故も、悪天候の中で着陸を試みた結果、墜落したものだった。
その後も、2012年5月、エアプサンBX8108便が146人の乗客と乗務員を乗せてサークリング着陸中に、許可された18R滑走路ではなく、18L滑走路に着陸し、事故が発生した。
2019年9月にも、上海航空の航空機がサークリング着陸中に許可された滑走路とは異なる滑走路に着陸する事態が発生した。
大韓航空出身のシン・ジス機長が執筆した「私の美しい飛行」でも、金海空港のサークリング着陸の難しさが回顧されている。
このような金海空港の安全性の問題は、加徳島新空港の必要性を浮き彫りにする一因となっている。
滑走路端のローカライザーに関しては、務安空港ほど高さはないものの、高さ60~85cm、幅60~85cmのコンクリート支持台が48~52mの間隔で二重に設置されていることが確認されている。
◇洛東江河口の渡り鳥飛来地「鳥類衝突の危険」
済州航空の事故原因として挙げられる「鳥類衝突(バードストライク)」は、金海空港でも避けられない問題だ。
金海空港が洛東江河口の渡り鳥飛来地のすぐ隣に位置するという地理的特性によるものだ。
過去に作成された国土交通省の「鳥類衝突削減活動マニュアル」によれば、金海空港の半径8㎞以内には、韓国の主要な鳥類生息地である乙淑島や西洛東江があり、他のどの空港よりも鳥類衝突の可能性が高い場所として分類されている。
金海空港は、2019年から今年8月までの過去6年間、韓国空港公社が運営する全国14の地方空港の中で鳥類衝突件数はが最も多かった。金海空港(147件)、金浦(140件)、済州(119件)、大邱(38件)、清州(33件)、光州(30件)などだ。
運航便あたりの鳥類衝突率を見ると、金海空港は0.034%で、6年間に10万便以上運航した5つの空港(金浦、金海、済州、清州、大邱)の中で、大邱空港の0.035%に続く2位だった。最も低いのは済州空港の0.012%だった。
体の小さい鳥であっても、高速で飛行する航空機と衝突した場合、その危険性は非常に大きい。
実際、時速370㎞で上昇中の航空機に900gのマガモ1羽が衝突した場合、航空機が受ける瞬間的な衝撃は4.8トンに達するとされる。また、鳥が航空機のエンジンに吸い込まれると、火災などの大規模な事故につながる可能性がある。
新羅大学航空運航学科のキム・グァンイル教授は「空港の多くは都市部ではなく、人里離れた静かな場所や海岸、河川沿いに位置している。これらの場所は鳥が貝類などの餌を探すのに適した生息地であるため、鳥類衝突が頻発する」と述べた。
一方で、加徳島新空港も地理的に鳥類衝突のリスクが完全に安全であるとは評価されていない。加徳島新空港に反対する環境団体は、その反対理由に「鳥類衝突の危険性が高い」という論理を含めている。
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