「寂しいけど、会う人がいない」
ソウルの単身世帯10人に3人は「中高年」。その数は年々増えています。ところが一人世帯への支援は手薄で、現地では「死角地帯」といわれています。必要な支援策は何か調べてみました。(シリーズ1/4)
◇退職を恐れる50代のため息
ソウル在住のイさん(53)は7年前、妻と離婚した。娘2人は妻が引き取り、一人暮らしを始めてからいつの間にか8年目だ。
平日は職場に通い、退勤後に職場の人と夕食を食べたり、約束がない日には一人でテレビを見ながら食事をしたりする。
特に、新型コロナウイルスの感染拡大で在宅勤務の時は、ほとんど夕食は一人で取った。週末には2年前に加入した山岳会の人たちと山に行くが、そうでなければ、一人で時間を過ごす。
「一人暮らしで最も大変な点は寂しいということだ」
イさんはこう吐露する。
「友人も家族がいる。娘2人も学業で忙しいので、1年に2回会うのがすべてだ。家族がいる友人と比べると、どうしても一人でご飯を食べたくないので、食事なども用意する気にならない」
だからといって、イさんが誰かに一人暮らしへの不満を言うのも難しい。「先に聞かれない以上は言わない」といい、それは「否定的な視線のためだ」そうだ。
イさんは今、退職後のことを恐れている。
「今は職場もあるので定期的に行く所があり、同僚もいる。しかし、仕事を辞めた後はどうなるか……。突然、健康に問題が生じても誰にも気付いてもらえないのも心配だ」
◇脆弱な社会的関係
イさんのように中高年一人世帯が生活しながら最も脆弱だと感じる部分は「社会的関係」だ。
ソウル研究院が昨年8月から今年2月まで実施した「一人世帯実態調査」によると、中高年一人世帯密集地域に居住する中高年のうち、週末の夕方に一人で食事をする割合は93.2%に達した。
特に、調査地域全体の中高年一人世帯の3人に一人は、最近3カ月以内に連絡を取ったり会ったりした人が一人もいないほど、深刻な社会的孤立状態に陥っていた。
「寂しさ」だけが問題ではない。中高年一人世帯は経済的に自立し安定した世代に見えるが、家族を扶養する負担が大きく、考試院(ベッド・机など最低限の設備を備えたワンルーム)や小部屋などに居住する住居脆弱層も少なくない。
「過去と比較した時、長期宿泊客の中で中高年が増えたのは事実だ。若者は学校、塾に行くのでよく会うが、中高年の中には引きこもって姿を見ない人も多い」
これはソウル市冠岳区で考試院を運営するパクさん(50代)の話だ。
専門家は「中高年一人世帯が、青年と老年一人世帯の特性を兼ね備えている」と指摘する。社会的関係の改善、働き口支援、多様な福祉政策分野の総合的な支援が必要だというのだ。
南ソウル大学社会福祉学科のヤン・スクミ教授は「寂しさも結局は働き口、住居とつながっている」と強調。「働き口がなければ経済活動ができなくなり、心理・情緒的に萎縮して鬱屈としたり、周辺の友人が離れて寂しさが増したりすることになる」と話した。また「中高年が老いれば老年一人世帯になるので、国民の税負担などの面でも対応が必要だ」と強調している。
(つづく)
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