SM所属歌手の精神的支え
韓国の芸能プロダクション「SMエンターテインメント」の総括プロデューサー、イ・スマン氏(70)は「K-POPのゴッドファーザー」と呼ばれています。そのイ・スマン氏のSM離脱がK-POP界に波紋を投げかけています。状況を取材しました。(最終回)
◇果たして株主の利益向上に?
イ・スマン氏が主導的にプロデュースし、多様なプロジェクトも手掛けてきたNCTとエスパが、世界的に成長している。
この時点で、イ・スマン氏が社を離れることになるという状況が、果たして株主の利益向上に役立つか。
特にイ・スマン氏はSM所属歌手の精神的支えで、「先生」と呼ぶ師弟関係のようなものだ。イ・スマン氏の不在は、単に一人のプロデューサーを失うこととは次元が違う。
最近の一連の状況を見て、NCTと少女時代メンバー兼俳優イム・ユナが「イ・スマン先生がいないSMは想像できない」と語る理由だ。
しかもK-POPの未来世代はイ・スマンの現役時代は知らなくても、彼がK-POPの象徴的な存在だということは皆が知っている。
イ・スマン氏の70回目の誕生日だった6月19日、「スムドク」または「ピンクブラッド」(PINKBLOOD)で通じるSMファンは、聖水洞(ソンスドン)のSM社屋の近くに、自主的にイ・スマン氏の「誕生日カフェ」をオープンして1000人以上が訪れた。
現場で会ったNCTファンの「NCTzen」は、イ・スマン氏について「制作者でありプロデューサー。K-POPのゴッドファーザーだと思っている。以前は歌手だったという話を聞いたこともあるが、その時代のことを私たちが全く知らなくても、SMのルーツだということはよくわかっている」と話している。
◇エンタメは「危険産業群」
誰もがよくわかっていることだが、エンターテインメントは基本的に「危険産業群」だ。
今のようなビルボードでの人気や、ユーチューブ再生数は簡単に作られたものではない。
イ・スマン氏のようなK-POPの先駆者たちが多くの紆余曲折と試行錯誤を経て、ようやくたどりついた結果だ。
これからもやはり同じだ。
この業界は、一般企業のように会社のシステムが構築されているだけで仕事を進めていける、という仕組みではない。イ・スマン氏のような人材の見識と経験、そして慧眼があってこそ可能だ。
イ・スマン氏が後輩プロデューサーの成長について強調する理由でもある。
K-POP業界の関係者たちは、イ・スマン氏のいないSMが、果たしてSMの原型を維持しながら遺産を受け継ぐことができるのか疑問を抱いている。
ある業界関係者は、イ・スマン氏がいないSMが、SMPに象徴される固有の音楽とパフォーマンスの伝統を引き継いでいけるのか。もしそうなってSMの色彩を失い、今のような原動力を維持できなければ、それは結局、株主はもちろんK-POP業界とK-POPファンにも大きな損害になる」と指摘している。
(おわり)
「数字だけで評価できない『K-POPのゴッドファーザー』のプロデュース」はNEWSISのイ・ジェフン記者が取材しました。
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