2024 年 11月 26日 (火)
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[KWレポート] 北朝鮮の聖地・白頭山が噴火したら… (2)

露骨になる中国の「白頭山工程」

白頭山天池©MONEY TODAY

南太平洋・トンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火は、改めて「火山の恐怖」を思い起こさせました。北朝鮮と中国の国境にある白頭山や日本海の海底火山はもちろん、日本の富士山なども噴火する可能性があり、もはや朝鮮半島は「安全地帯」ではないとの見方も出ています。それらの火山が噴火する可能性と被害規模、対策をまとめてみました。(シリーズ2/4回)

◇国の利害関係

「中国では『白頭山』ではなく『長白山』と呼びます。中国は白頭山の研究を2000年から始め、今は独占しています。だから国際的には白頭山より長白山の方が普遍的ということです。『東海(日本海)の水が乾き、白頭山が朽ち果てても――』という『愛国歌』(韓国の国歌)を自信持って歌うことができるでしょうか」

火山の専門家である浦項工科大(POSTECH)環境工学部のイ・ユンス特任教授がMONEY TODAYの電話取材に「研究分野では『白頭山工程』がさらに露骨になっている」と強調した。

白頭山は北朝鮮と中国の国境に位置し、噴火の危険性を評価して監視するためには国際協力が必要だ。しかし中国は、自国の利害関係により、国内研究陣との共同調査と研究を厳しく制限している。

中国政府は1990年代から白頭山研究を準備している。2000年代初めからこれを本格化し、2018年12月、白頭山のある吉林省に火山研究所の設立を推進し、2年後に完成した。中国は、白頭山をめぐる20年間の研究成果をもとに、世界で2600あまりの火山の基礎データベースを構築したという。

◇中国の研究をベースに

一方、韓国の白頭山研究の実情は非常に不十分だ。

韓国地質資源研究院が2020年1月に白頭山火山研究団を発足させたが、現在の人員はわずか4人にすぎない。毎年4~5億ウォンの予算で研究を続けているが、現地調査ができず、中国の研究をベースにしていたり、コンピューター・シミュレーションをしたりする程度だ。

専門家らは、白頭山が世紀ごとに噴火し、1925年が最後の噴火であるため、いつ爆発してもおかしくないと口をそろえる。946年の火山噴火指数(VEI)7規模か、これより100分の1水準だった1702年水準(VEI=5)でも、現在の北朝鮮がこれに対応することは難しいとみられる。

こうした状況で白頭山が爆発すれば、北東アジア情勢に「激浪」が押し寄せるという分析が出ている。中国が研究を独占し「白頭山工程」を露骨化しており、中国が北朝鮮に介入するとの見方だ。この際、韓国と中国に続き日本と米国まで介入すれば、北東アジアに「葛藤局面」が生じるということだ。

◇北朝鮮の力では対応しにくい

韓国地質資源研究院白頭山火山研究団のクォン・チャンウ博士は次のような見立てを語る。

「白頭山が噴火した場合、おびただしい火山灰はもちろん、天池にたまっている20億トンの水で、さまざまな被害が予想されるが、北朝鮮の力では対応しにくい。この場合の問題は韓国、中国、日本、米国まで介入する可能性があることだ」

そのうえで、次のように警鐘を鳴らす。

「白頭山の噴火は、一つの火山問題ではなく、国際的・政治的・社会的な複合災害だ。白頭山の噴火の可能性を予想し、これに対するシナリオを作り準備しなければならない」

POSTECHのイ・ユンス教授は、白頭山問題は朝鮮半島の安全保障にも影響を及ぼし得るだけに、韓国の研究陣が北朝鮮で研究できる環境を整えなければならないと提言した。国連安保理の対北朝鮮制裁委員会は2017年、英国の国連代表部が提出した白頭山火山噴火の可能性研究について「例外条項に該当する」として、異例的に共同研究を許可した。

イ教授は「今の状況で白頭山が噴火すれば、現在まで研究を主導した中国が統制するしかない。過去に起きた千年大噴火の100分の1の水準でも北朝鮮は統制できないため、韓国が独自的な路線で研究できるよう全省庁間の協力が急がれる」と強調する。

さらに次のように促している。

「現在、白頭山研究は『中国に押されている』という程度ではなく、韓国は現場に行けないため能力がゼロに近い。中国のように量で勝負しては勝算がなく、火山・地質専門家だけでなく人工知能(AI)、物理、電気電子など専門家が力を合わせなければならない」

国内の専門家らは火山噴火による経済・産業・安保領域の被害を最小限に抑えるために、白頭山だけでなく鬱陵島、済州島付近の海底火山に対する噴火別シナリオが必要だと口をそろえる。最近は東南アジアや南太平洋地域で火山爆発が起きており、研究の強化が求められる。

(つづく)

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