朝鮮半島は「火山安全地帯」ではない
南太平洋・トンガ沖で起きた海底火山の大規模噴火は、改めて「火山の恐怖」を思い起こさせました。北朝鮮と中国の国境にある白頭山や日本海の海底火山はもちろん、日本の富士山なども噴火する可能性があり、もはや朝鮮半島は「安全地帯」ではないとの見方も出ています。それらの火山が噴火する可能性と被害規模、対策をまとめてみました。(シリーズ1/4回)
◇毎世紀ごとに噴火
トンガの首都ヌクアロファから北西約60キロの南太平洋で2022年1月15日、海底火山「フンガ・トンガ・フンガ・ハアパイ」が噴火した。爆発物の量に応じて9段階で示す火山噴火指数(VEI)は5~6とみられている。噴火により通信網は麻痺し、津波や火山灰が襲い、前例のない被害が発生した。韓国の専門家らは、かつてVEI7規模の大爆発を起こした白頭山があり、日本海にもトンガ沖のように海底火山が多数存在しているため、朝鮮半島は「火山安全地帯」ではないと、口をそろえる。
専門家によると、白頭山は毎世紀(100年)ごとに噴火していたが、1925年を最後に火山活動が止まった。しかし、白頭山のカルデラ湖・天池の地下約4000メートルと1万5000メートルにマグマだまりが存在することが明らかになり、噴火が差し迫っているという研究結果も出ている。
韓国内外の火山研究者らが白頭山に注目する理由は、946年の大噴火のためだ。千年に一度起きる大噴火という意味で「千年大噴火」と呼ばれる。当時放出された火山灰は、韓国全体を1メートルの厚さで覆う量だった。白頭山は過去2000年間の5大火山噴火の一つで、トンガ沖の噴火の100~1000倍と推定されている。
韓国地質資源研究院白頭山火山研究団のイ・スンリョル博士は「白頭山は2002~06年の間に新しいマグマが供給され、地震が急激に増加して、火山体が膨張するなどの現象が起きた。幸い噴火は起きなかったが、再び不安定な状態になれば、白頭山は、噴火する可能性が非常に高い危険な火山になる可能性がある」と話している。
地質資源研によると、白頭山で当時、微弱な地震の回数が増えた。2003年11月だけで243回発生。火山が地表で20センチ隆起する現象も観測された。
火山の専門家である浦項工科大(POSTECH)環境工学部のイ・ユンス特任教授も「いつどのような規模で噴火するか予測できないが、白頭山が噴火する確率は100%」だと指摘。「爆発すれば白頭山の天池の下にある液状二酸化炭素が気化し、窒息死など人命被害が出る可能性もある」としている。さらに「天池にたまっている20億トンの水が、火砕流と共に流れる『火山泥流』も発生する可能性が高い」とし「火山灰によって北朝鮮の異常気候はもちろん、韓国にもさまざまな問題が引き起こされる」と述べた。
◇日本海の海底火山
国際的に概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山を「活火山」と分類する。朝鮮半島の活火山としては白頭山や鬱陵島、済州島が含まれる。このうち、専門家らが注意深く見守っているのは白頭山と鬱陵島に近い日本海の海底火山だ。
鬱陵島付近の日本海には噴火の可能性が予測できない数十の海底火山の存在が把握されている。海底火山は噴火周期が長く、監視が難しい。しかし、これまでこれといった関心が持たれず研究すら行われなかったので、その危険性は未知だというのが専門家の大方の見方だ。
「鬱陵島付近の日本海には少なくとも数十の海底火山が存在する。これらの火山には小さな噴火口が存在するが、マグマがどこにあるのか分析されていない。マグマの存在がわかれば危険の可能性を把握できる」。イ・ユンス教授の指摘だ。
また、釜山大地質環境科学科のキム・ギボム教授は次のように解説する。
「鬱陵島は噴火周期が非常に長く、監視が難しい。そのうえ、火山がある日本海の水深は約2000メートルにすぎない。日本海の海底火山がトンガ沖のように噴火した場合、火山灰だけでなく、津波による被害も大きく生じる可能性がある。鬱陵島付近の海底火山は、地温の増加が1000メートル当たり約97℃。これは鬱陵島の方が白頭山よりも噴火が予想される火山だ」
ほかにも最近、富士山などの周辺で、噴火前に起きる地震現象も観測された。南東の風が吹く夏に日本で火山が噴火すれば、朝鮮半島南部地域に影響を及ぼす可能性があるという見方もある。また、南太平洋、東南アジアの火山噴火活動も活発化している。
(つづく)