飼料穀物の備蓄は皆無
新型コロナウイルスの感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻などにより、平和な国際分業体制が崩れ「グローバルサプライチェーンの危機」が深刻化しています。韓国の事情を取材してみました。(シリーズ7/9)
◇中国は1カ月以上の備蓄
かつて大飢饉(ききん)を経験した中国は、米、小麦、トウモロコシ、大豆など主要穀物消費量の1年分を中央政府が備蓄。安定的な海外供給網を確保している日本もコメ100万トン、小麦2.3カ月分(2021年は93万トン)、飼料穀物1カ月分以上を備蓄している。
一方、韓国は輸入低率割当関税(TRQ)分を含め、年間80万トンのコメを公共備蓄しているが、小麦1万7000トン、大豆2万5000トンなど、他の穀物は微々たる水準だ。肉類消費が大きな比重を占めている状況で、飼料穀物の備蓄は皆無だ。
このように食糧自給率がますます低くなる状況で、異常気象が日常化すれば、韓国の食糧安保がさらに危機に直面するだろうという暗然とした思いにとらわれる。国際原油価格など原材料価格、ウォン安など時々刻々と変化するグローバル経済状況も食糧主権の確保には障害要因だ。
韓国食糧安保研究財団のイ・チョルホ名誉理事長は「戦争や伝染病、経済制裁などで朝鮮半島が封鎖される状況が発生すれば、数カ月で国民の大部分が深刻な食糧難に苦しむことになるだろう。自給率の高いコメに集中した食糧農業政策では、世界的な食糧危機と食糧兵器化にまともに対応できない。より根本的な長短期政策を樹立しなければならない」と指摘する。
◇安定的な海外供給網確保が重要
イ・チョルホ名誉理事長は食糧安保のために▽低所得の脆弱階層に対するコメ無償支援制度▽穀物の常時備蓄と備蓄施設の拡張、食糧コンビナートの建設▽民間企業の海外穀物流通事業および海外農業協力事業の支援強化▽民間企業の原料、在庫量の拡大のための政府支援強化▽生命工学技術の研究支援と活用および食品産業育成、フードテック先進化――などが必要だと提言した。
チョン・ギョングン農林畜産食品相は「我が国は穀物の対外依存度が高く、国内自給率の引き上げに加え、安定的な海外供給網の確保が何より重要だ。民間企業が海外穀物の中心的な流通施設を確保する過程で、必要な政府支援がなされるよう関係部署と協議し、積極的に対策を講じる」と話す。
政府は食糧供給網を強化するために早ければ今月中に「中長期食糧安保強化策」を出す計画だ。ここには再設定した食糧自給率目標値と国内自給基盤、安定的な海外供給網の確保策などが盛り込まれる。
韓国企業の海外農業事業を間接的に支援するとともに、穀物需給の安定のために国内企業が海外で確保した穀物を搬入できるよう、海外農業・山林資源開発協力法の改正も進めている。非常時に海外で確保した穀物を国内に迅速に搬入できるよう、事業者の損失補償の根拠法令を準備している。
(つづく)
©NEWSIS