安全保障で浮上した食糧主権
新型コロナウイルスの感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻などにより、平和な国際分業体制が崩れ「グローバルサプライチェーンの危機」が深刻化しています。韓国の事情を取材してみました。(シリーズ5/9)
新型コロナウイルスの感染拡大とロシアのウクライナ侵攻で悪化したグローバルサプライチェーン危機による不安感は、韓国の食卓にまで広がっている。
新型コロナ以後、上昇し始めた国際穀物価格は、ウクライナ侵攻でさらに急騰した。食糧確保に不安感を感じた主要国が、食料品の輸出に「かんぬき」をかけてロックし、海外依存度の高い韓国は危機感が広がった。
食糧資源確保のための「銃声のない戦争」の中、韓国の食糧安保指数は下落傾向を繰り返すなど無防備状態だ。サプライチェーン危機に気象異変など気候危機まで加わり、食糧問題は韓国経済を崩壊させかねないもう一つのアキレス腱となっている。
◇国際穀物価格、コロナ以後56%暴騰
農林畜産食品省と農村経済研究院(KREI)などによると、国連食糧農業機関(FAO)が調査して発表する世界食糧価格指数は、今年上半期の平均は147.9で、新型コロナ直前の年の2019年の平均95.0に比べて55.7%も増加した。
ロシアによるウクライナ侵攻直後の3月には159.7と過去最高値を記録した。ロシアが世界最大の穀倉地帯の一つであるウクライナを封鎖し、輸出用穀物の足が縛られ、世界の穀物市場が大きく動揺した。
世界が食糧の需給に不安を抱き、各国は自国の食糧安保を守るために「銃声のない戦争」に突入した。
世界で小麦生産量が2位のインドは5月、小麦の輸出を制限した。食糧不安が加速されると、自国市場の安定のために小麦輸出規制に乗り出し、穀物市場は再び動揺した。
パーム油の価格が急騰すると、インドネシア政府もパーム油の輸出を制限し、国内食用油の価格が急騰した。大型マートなどでは、在庫が底をつくなど「食用油大乱」が起きた。
ロシアによるウクライナ侵攻で食糧不安が加速するやいなや、各国の食料品輸出禁止・制限措置は急速に広がった。
国際食糧政策研究所(IFPRI)によると、2月のウクライナ侵攻以後、わずか3カ月以内に27カ国で45件の食糧や肥料の輸出禁止・制限措置が発動された。小麦とトウモロコシなど主要穀物の他にも食用油、肉類、乳製品など多様な食品原材料が含まれた。
(つづく)
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