新型コロナが浮き彫りにした脆弱性
新型コロナウイルスの感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻などにより、平和な国際分業体制が崩れ「グローバルサプライチェーンの危機」が深刻化しています。韓国の事情を取材してみました。(シリーズ1/9)
◇韓国、対外貿易依存度高く
2020年以降、新型コロナウイルス感染症により世界各地で工場の稼動がストップし、物流に支障が生じ、既存のサプライチェーンの脆弱性が明らかになった。
各国は、新型コロナ感染症が大流行しはじめたころ、その影響から早く抜け出すために既存のサプライチェーンの回復に集中したり、近隣諸国に多角化したりした。しかし、最近では「経済安保」の概念が加わり、同盟国間の協力を意味する「フレンドショアリング」(同盟・友好中心サプライチェーン再編)を強調している。
韓国は対外貿易依存度が高く、サプライチェーンによる危険可能性が高いうえに「同盟国」米国と「交易国」中国の間での綱渡り外交を強いられている状況だ。このような中、不安定な原材料価格とグローバルインフレ(物価上昇)、気候変動などで世界経済の不確実性が増し、国内経済への影響に対する懸念が高まっている。
産業通商資源省の最新資料「グローバルサプライチェーンインサイト」によると、原油・原材料などはサプライチェーン危機に陥っている。先月26日現在で、ドバイ原油価格は昨年の最低水準と比べて68.4%急騰した。鉄鉱石の価格は昨年の最低値と比べて11.8%、ニッケルとアルミニウム価格はそれぞれ37.6%、7.9%上昇した。
今年2月のロシアによるウクライナ侵攻以後、エネルギーや食糧価格の上昇傾向が激しくなり、主要国では全般的に物価上昇圧力が高まった。こうした中で、中国の新型コロナウイルスの封鎖措置以降、素材や部品の供給に支障をきたし、一部産業では生産が制約された。このような供給の支障は、韓国経済にも少なからぬ影響を与えかねない。
◇産業の生産を制約
実際、国内でも最近、グローバルサプライチェーンの混乱が一部の産業の生産を制約し、産業全般にわたりコストを高める要因として作用している。
韓国銀行が発刊した報告書「最近のグローバルサプライチェーンの支障の特徴及び国内産業に及ぼす影響」によると、国内の自動車生産は、昨年末以降改善するかに見えた。しかし、中国の封鎖措置にワイヤーハーネス(自動車内部の電線束)、エアバッグ制御ユニット(ACU)などの部品供給に支障が生じ、3月に入って生産は減少傾向に転じた。
建設業は昨年以後、資材価格が大きく上がった。ロシア依存度の高い有煙炭(セメント・生コン原料)の需給不安定なども加わり、回復が遅れている。さらに、半導体製造用の装備の導入が遅れ、特殊な用途の建設機械を中心に生産が減少した。
そして、何よりもロシアのウクライナ侵攻でエネルギーの需給危機が高まり、エネルギー輸入額が急増。貿易赤字基調が固定化している。韓国は対外貿易依存度が高いだけに、貿易収支を支えていた輸出まで停滞すれば、経済成長エンジンに警告灯がついたのも同然だ。9月20日までの累積貿易赤字規模は、292億1300万ドルだが、これはリーマンショック時の2008年(-133億ドル)と、アジア通貨危機直前の1996年(-206億ドル)の水準を超え、歴代最大規模だ。
(つづく)
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