財産権、肖像権……法律の整備を
現実空間とデジタル仮想空間が一つになるメタバースの世界。大多数の企業が今、自社サイトを持つように、今後それぞれの「メタバース環境」を構築するという将来像も語られています。AI仮想人間とメタバースの現状と展望を3人の専門家に読み解いてもらいました。(最終回)
《座談会参加者》
・パク・ジウン 「False 9」代表
・チョン・ジフン 「みんなの研究所」最高ビジョン責任者(CVO)
・キム・ガヒョン 韓国第1号TikToker/「ニューズ」代表
◇マイナスの側面
キム代表 メタバースで発生するサイバー犯罪やハッキングなどは、法律で厳しく取り締まる必要がある。メタバースに入り込めば、現実から乖離してしまうという懸念がある。一方で可能性を見る必要もある。体の不自由な人が家の中で海外旅行を楽しんだり、現実には家を購入できない人が心の休まる空間を得たりすることもできるだろう。現実世界で不可能なことを可能にする、という部分を見る必要がある。
チョンCVO メタバースのシステムは現実世界と結びついた技術だ。したがって、現実に存在するさまざまな原則と法律をそのまま準用しやすい。デジタル通貨も記録が残って追跡が可能なため、犯罪と関連した問題は既存の法体系を適用できる。インターネットが初めて登場し、デジタル経済に転換した時より、混乱は少ないと思う。ただ、仮想人間に関連した権利の問題、つまり財産権、肖像権などについては法律を見直す必要がある。
◇10年後の姿
パク代表 メタバースが広がれば、経済の生態系に多くの変化を与えるだろう。個人の経済活動が多様化し、全体的な資金の流れが速くなるだろう。しかし、国家間の格差などが発生しかねないうえ、海外で作られたメタバースプラットフォームにユーザーが集中し、そちらに資金が流れ出るということもあり得る。備えが必要だ。
キム代表 スマートフォンが登場してから約10年。それ以前の世界と、その後の世界は完全に変わった。メタバースでもそうなるだろう。仮想通貨であれNFTであれ、現実経済の限界を超えるさまざまな経済的チャンスが生まれるだろう。ただ、スマホを使わないからといって日常生活に大きな支障をきたすわけではないというのと同様に、メタバースの世界で生きていかなければ淘汰されるのでは、という過度な心配は不要だ。
チョンCVO 10年後には、メタバースはネットやスマホを使うのと同じようになるだろう。今、ネット使用について誰もわざわざ言及しないようにメタバース使用も当然視される世の中になると思う。デジタル資産などメタバースに存在する数多くの価値に投資・取引できるようになる。多くの不動産を持つ富裕層でなければお金を稼げないという今のような時代ではなく、若い世代が努力して投資すれば保障が得られるような、より良い未来になることを期待する。こうした仕組みを理解する人が増えてこそ、犯罪などメタバースの副作用にも十分に備えることができるだろう。
(おわり)
「仮想人間/メタバース専門家座談会」はチェ・テボム記者が取材しました。