「ネット版万里の長城」があるのになぜ視聴できる?
全世界で1億を超える世帯が視聴し、米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)の最高記録を更新した韓国ドラマ「イカゲーム」が、中国でも爆発的な人気を博しています。しかし「イカゲーム」のようなコンテンツを中国でつくり出すには、まだまだハードルが高いようです。その理由を考えてみました。(シリーズ1/計3回)
北京や上海、湖南省長沙……。中国の大都市には「タルゴナ」(カルメ焼き)を売る露店が次々とでき、客が長蛇の列を作っている。「イカゲーム」には、このタルゴナに描かれた模様をくり抜くシーンがあり、視聴者の話題になった。
長沙のある露店は、タルゴナを20元(約356円)で販売し、「イカゲーム」のシーンのようにタルゴナの中の模様をきれいにくり抜けば、無料にしている。
韓国で制作されたドラマが中国でこれほど反響を呼ぶのは、2014年の韓国ドラマ「星から来たあなた」以来だ。当時、筆者(キム・ジェヒョンMoneyToday専門委員)が住んでいた上海のコリアンタウンでは、フライドチキンの店の前で、中国人客が数十メートルの列を作って待っていた光景が今も鮮明に思い浮かぶ。「星から来たあなた」の後は、韓国ドラマ「太陽の末裔」が中国で話題になったが、それほどの人気ではなかった。
中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、「イカゲーム」というハッシュタグ(検索目印)のついたページの閲覧数は2021年10月13日の時点で19億6000万回を超えるほど、中国ネットユーザーの「イカゲーム」に対する議論が活発化している。「イカゲーム」に関する記事は中国メディアでも相次いでいる。
おもしろい現象だ。中国政府がインターネットを統制しようと「グレート・ファイアウオール(ネット版万里の長城)」と呼ばれる検閲システムを構築しているため、中国人はネットフリックスを視聴できないはずだからだ。
この「グレート・ファイアウオール」は、米誌「ワイアード(WIRED)」が1997年に初めて使用して以来、中国のネット検閲を意味する言葉として使われている。中国のネットユーザーらは、グーグルやフェイスブック、ユーチューブへのアクセスも不可能なのだ。
(つづく)