労災防止の決定打となるか…教育・訓練に適用
メタバース時代が現実に近づいている――韓国産業界でこうした受け止めが広がっています。特に、注目されているのは労働災害対策。現場を取材してみました。(シリーズ1/3)
◇重大災害処罰法制定
韓国の産業界が、メタバースのもたらす変化に注目している。代表的なものとして「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」といった技術の総称である「XR(クロスリアリティー)」技術を活用した教育・訓練を挙げることができる。特に、韓国では今年初めに重大災害処罰法が施行され、労働災害に対する目もより厳しくなった。このため、XR技術が労災防止の決定打となるかに関心が集まっている。
法制定後、産業現場の安全に対する関心が高まり、関連予算編成も増えている。
韓国経営者総協会が今年4月に発表した「企業安全管理実態および重大災害処罰法制定認識調査結果」によると、法制定後の安全に対する関心度を経営者に尋ねたところ、回答者のうち69.0%が「非常に高くなった」と答えた。安全関連予算も70.6%が「増加した」と答えた。
XRを活用した教育・訓練プログラムの長所は、現実では経験しにくい状況を本当のように体験し、災害に備えることができるという点だ。
情報通信産業振興院が発表した「仮想・増強現実(XR)を活用した教育・訓練分野用途分析」報告書によると、危険度や精度が高いほど費用節減効果が大きく、消防士訓練▽化学事故対応▽警察テロ訓練――など、現実に体験することが不可能だったり、相当な準備期間が必要だったりする訓練で、特にXRが有用だと分析された。
近年、複雑になる災害に対応するため、多様な機関が参加する訓練の重要性が強調されている。しかし、現在の現場・訓練システムは、多くの時間と予算・人材が必要だ。XRベースの災害対応訓練は、費用を最小化でき、時間と場所の制約なしに参加が可能だ。
◇現実世界では経験できない危険状況を間接体験
実際、化学物質安全院は2019年下半期から「化学事故専門課程」に仮想現実(VR)、拡張現実(AR)訓練を正規科目とし、昨年開庁した新庁舎でVR、AR化学体験施設を運営中だ。スコネックエンターテインメントが訓練コンテンツを提供した。
スコネックは2018年から2020年までの3年間、環境省や韓国環境産業技術院とともに化学事故対応環境技術開発事業に参加。「大空間基盤体感型化学事故対応教育・訓練のためのXR大空間ワーキングシステム基盤の化学教育・訓練コンテンツ」を開発した。
韓国南東部・蔚山広域市の「有害化学物質の流出事故対応訓練」には、ハンビットソフトが4年間かけて開発した「AR基盤災害対応統合訓練シミュレーター」が使われた。韓国で行政職公務員を対象にするARシミュレーターが導入された初の事例だった。
先月2日に閉幕した「2022国際消防安全博覧会」では、XR技術を活用した消防訓練コンテンツが注目を集めた。XR環境で作り上げた火災状況で、消防士が協力して火災を鎮圧したり、消防装備使用時の留意事項を学んだりし、熟練度を高めた。
◇海外に伸びるK-技術力…XRで現場遠隔管理「産業災害防止」
バーネクト、インタラクトなど多様な韓国企業もXRコンテンツの開発に乗り出し、産業生態系を広げている。
インタラクトは先月、KOICA(韓国国際協力団)や中央アジアのキルギス非常事態省と「XR消防訓練システム供給」について業務協力を締結した。それによると、インタラクトはキルギスに▽XR消防訓練ソフト▽XR訓練施設▽機材――などを提供する。
インタラクトは、XR技術とネットワーク技術を基盤に消防、軍事、警察、学校分野の教育・訓練システムを開発・供給している。インタラクトは2020年に初の海外支社を中国に設立。現在は東南アジア、日本などにも設立を計画している。
また、産業用XRソリューション企業バーネクトは今年2月に「XR技術を活用した労災防止のための安全管理ソリューション」を公表した。バーネクトの代表的な多者間遠隔協力ソリューション「バーネクトリモート(Remot)」は、現場の労働者と遠隔地の管理監督官を結び、管理監督官が危険を把握した後、正確な作業指示ができるようにする。
バーネクトは、独自開発した「XR多者間遠隔協力ソリューション」をLG化学、サムスン電子をはじめとする39の大企業・系列会社と韓国電力公社、韓国空港公社など27の公企業に供給する。また、バーネクトは今年7月にバーネクトリモートライセンスを韓国南西部・光州広域市の消防安全本部に寄付した。
(つづく)
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