◇中国の事情
日本のオンラインゲームでは現在、韓国のPCオンラインゲームや自国のソーシャルゲームなどで培われたシステムが使われ、バージョンアップされている。そこにはサーバーの技術のほか、アイテム課金などゲームを運用するうえでのビジネスモデルが含まれている。
2010年以降、韓国のスマホ市場に日本以上のスピードで中国のオンラインゲームが進出した。中には、ゲーム会社に中国の資本が入ったことで徐々にグローバル化が始まった。
その背後には中国のオンラインゲーム業者の事情が隠されている――。
日本や韓国などと国情の異なる中国では、オンラインゲームの配信は法的規制による高いハードルがあり、ビジネスも難しい。
韓国のビデオゲーム開発企業「ブルーホール」が手掛けたバトルゲーム「PUBG」を例にとる。世界的なヒット作で、最大100人のプレイヤーがさまざまな武器を駆使し、生き残りをかけて戦うものだ。
一方、中国当局はこのPUBGに対して「残酷すぎる」と批判的な立場を取った。そもそも、子どもや若者の近視を減らすことを目的に未成年者のゲーム利用を制限してきたという背景もあった。
2017年10月31日の米CNNテレビ(電子版)によると、当時、中国本土では「PUBG」は販売されていないのに、このゲーム全体の4割を中国本土での売り上げが占めるまでになっていた。中国本土でも香港経由で入手できたためだ。
中国のインターネット大手、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)が中国でのライセンス獲得に意欲を見せ、暴力的なコンテンツを禁じる中国の厳格な規制に合わせてゲームの内容も修正して公開した。それでも2019年5月8日、騰訊は試験配信を終了すると発表し、SNS上ではユーザーの悲鳴が上がった。
PUBGの中国人ユーザーは大半が別のゲームに移った。PUBGに似ているものの▽暴力性は抑えられ▽人民解放軍空軍を称揚する内容となり▽対テロ軍事訓練の現場が舞台になっている――という。
◇プレイヤーキル
国情の違いでいえば、グローバルなオンラインゲーム業界において「日本は特殊だ」という論調で語られることがある。「プレイヤーキル(Player Killing、PK)が流行しない」(川口氏)からだ。
言葉の説明になるが、オンラインゲームのスタイルにロールプレイングゲーム(RPG=Role-playing game=RPG)というものがある。ゲーム参加者がそれぞれに割り当てられたキャラクターを操作して、冒険や戦闘などを繰り返して目的を達成するもの。
少数プレイヤー参加するオンラインRPGを「MORPG」、大規模人数が同時参加するオンラインRPGを「MMORPG」という。MMORPGで、他のプレイヤーを攻撃することを「プレイヤーキル」と呼んでいる。
eスポーツも含め、欧米を中心に最も流行しているのが、このPKだ。
このうち、自分が操作しているキャラクター(First-person)の視点で、ゲーム中で動いて戦うのがシューティングゲーム(FPS =First-person shooter)。実在の武器や戦場などを再現した「リアル系FPS」と称されるジャンルもある。
このPKについて川口氏に解説してもらった。
「早い話が血が出ないだけ。チーム対チームでの殺し合いだ。しかも相手を全滅させるゲームが欧米では中心になっている。2000年代前半のPCオンラインゲームでは、撃ち合い、殺し合いは日本だけが流行しなかった。特に1対1で殺し合うオンラインゲームは遠ざけられた。中国や韓国のオンラインゲーム関係者から『なんで日本人はPKが嫌いなんだ』と詰め寄られることもあった」
川口氏によると、日本では▽コミック系に人気があり▽コミュニケーションを取りながら▽みんなで一緒に進もう――という形式が好まれるそうだ。ただ、それがPKを遠ざける要因になっているのかといえば、「はっきりしない」そうだ。
日本でも世代交代が進み、2020年代になってきて、PKゲームも増えた。オンラインゲームでの「殺し合い」がオフラインの世界を刺激しないか。この懸念がいつの時代もつきまとう。(つづく)
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