尹錫悦新政権への期待
韓国にインターネット専業銀行が設立されてちょうど5年。発足当時、「期待半分、憂慮半分」といわれたネット銀行はその後、金融市場をどう変えたのでしょうか。(シリーズ5/6)
5月に発足するユン・ソンニョル(尹錫悦)政権は「貸出規制緩和」と「デジタル」に重点を置く方針を掲げる。
ユン次期大統領は、大統領選の候補者だった時、融資規制の緩和を約束していた。具体的には総資産有利子負債比率(LTV)を最大80%まで緩和すると明らかにしている。最近、ユン氏は政権引き継ぎ委員会に「人生で初めて住宅を購入しようとする国民に、政府が息を吹き込むべきだ」と、公約を改めて強調した。引き継ぎ委は現在、債務返済額(元利金)が可処分所得に占める比率「DSR」の規制部分の緩和を検討しているという。
いま、ネット専業銀行業界で新政権への期待が膨らんでいる。
◇荷物をまとめるMZ銀行員
一方、融資規制の緩和は「家計融資総量規制」の廃止につながりかねない。これは、消費者の過度な借り入れを防ぐため、年収などを元に貸し出しを規制するものだ。
インターネット銀行は2021年、都市銀行より融資規模がはるかに小さいにもかかわらず、同じレベルの総量規制が適用された。トスバンクが発足9日で貸し出し営業を終了したのも、この「総量規制」のためだった。
あるネット銀行の関係者はこう主張する。
「総量規制は法規定ではない。それゆえ、新政権にその意思があれば、撤廃できるものだ。融資増加率を一律に抑えるのではなく、特にネット銀行は成長速度を見ながら、個別に管理すべきだ」
また、新政権が、ネット銀行に中・低信用融資の割合を事実上強制している管理体系も見直しかねない――こんな観測もある。
金融当局は、ネット銀行の中・低信用融資の割合を2023年末までに30%以上拡大する、と発表した。業界関係者は「融資割合ではなく、供給金額規模を中心とする管理に変わるのではないかと期待する。融資割合の管理では、高信用者向け融資を妨げる作用が起きてしまう」とみる。
また、別の関係者はこう展望する。
「2021年に一部のネット銀行が高信用者中心に融資したことがあった。だが、金融当局が指摘して以降、すべての銀行が中・低信用顧客に集中した。格付けモデルの高度化を完了するなど、すでに1.5金融へポジショニングしているため、自由にしておいても、中・低信用融資規模は大きく減ることはないだろう」
新政権は「産業革命」を強調する。ネット銀行が「金融革新のアイコン」として、デジタル関連業務をさらに拡大できる基盤が作られるという見方もでている。
あるネット銀行幹部は「(GAFAに代表される)ビックテックは『銀行化』するが、銀行はビックテックのようにはなれない。ネット銀行が出現するやいなや、かえって営業拡大の幅が狭くなった。銀行ができる兼営業務や付随業務の範囲を増やさなければならない」と話した。
こうした見方に対し、金融当局は、銀行兼営業務は地道に拡大し、今後も続くという立場だ。
(つづく)