大手銀行からMZ世代「大移動」
韓国にインターネット専業銀行が設立されてちょうど5年。発足当時、「期待半分、憂慮半分」といわれたネット銀行はその後、金融市場をどう変えたのでしょうか。(シリーズ4/6)
◇「悔いのない選択」
インターネット専業銀行が大規模な採用を始めるたび、銀行員が集まるアプリがにぎわう。採用問い合わせのための文章は、すべて著名な大手都市銀行の職員が作成する。かつて大手銀行は「神の職場」と呼ばれた。MZ世代の銀行員は、その大手銀行を自ら脱出し、ネット専業銀行に「大移動」している。
大手銀行からカカオバンク、Kバンク、トスバンクというネット専業銀行3行に転職した行員5人にインタビューしてみた。その内容を総合すると、彼らは、社内の雰囲気、組織文化、業務方式などの面で満足感を示した。年俸、福祉面でも「悔いのない選択だ」と言った。
2021年の銀行員の年俸を見ると――。
カカオバンクの役職員の平均報酬は1億5300万ウォン。ストックオプション(株式買収選択権)の影響が加わった結果だ。韓国シティ銀行(1億2000万ウォン)、KB国民銀行(1億1000万ウォン)を上回る。銀行業界の最高水準に名を連ね、カカオバンクは「高額年俸銀行」に位置付けられる。
特に開発職などデジタル人材の年俸満足度が高かった。
2021年にカカオバンクに転職した開発職のA氏はこう話す。
「都市銀行では年功序列によって年棒の限界を超えるには壁があった。でも、いまの職場では年次、経歴に関係なく、その年の成果、遂行したプロジェクトそのもので評価される。年俸の満足度がはるかに高い」
◇「新しい挑戦が難しかった」
転職を決心した理由を聞くと、前職場の硬直した雰囲気、安定を追求する文化――などを挙げた。
2018年にカカオバンクに移籍したBさんの感想はこうだ。
「かつての職場は安定し、新しい挑戦が難しかった。誰かが『安定』を長所として語っていた。そんな場所から離れたかった。前の銀行の先輩、チーム長、部長がこんなことを言っていた。『数年内に、銀行はカカオバンクの革新に追いつくだろう』。こう引き止められたが、その『数年』はまだ到来していないようだ」
都市銀行からトスバンクに転職したC氏。
「発売する商品やサービスが銀行ごとに似ていて、何を出しても後発走者だと感じる時が多かった。今は、まったく新しい商品とサービスを作っている。精神的な渇きが解消された」
◇柔軟な環境の模索
組織文化、雰囲気の面でも、既存銀行とネット専業銀行の間で大きな差を見せた。
既存の銀行も、保守的な文化から脱し、柔軟な環境をつくろうとしている。服装や呼称を職員の自主性に委ねるなどしているが、そういうものは一気に変われるものではない。
ネット専業銀行では半ズボン姿の職員と向き合うのが普通だ。カカオバンクでは互いを英語名で呼ぶ。Kバンクとトスバンクは「ニム(様)」と付ける。
昨年、カカオバンクに入社したDさんはこんな話をした。
「自由な服装での出勤というものに戸惑った。シャツや綿ズボン、靴を買ったが、出勤初日にジーンズ、運動靴、帽子姿の職員を見て、無駄な買い物をしたと思った。呼称についても、チーム長の名前を呼ぶことができず、しばらくは口ごもりながら会話を始めた」
転職後、業務面でもおおむね、満足感が示された。
昨年、Kバンクに転職したE氏は「かつては仕事をする中で組織を優先させていた。今は業務そのものを最重視している。その結果、業務がはるかに効率的に進んでいる」と話した。
ネット専業銀行は発足後、経験者の大規模採用によって、都市銀行の人材を引き入れた。特に、カカオバンクは度重なる3ケタの公開採用で規模を拡大し、2017年7月の発足当時には300人に過ぎなかった職員は、今年3月末には1172人。実に4倍近く増えた。業界関係者は「既存の銀行は店舗数も人員も減らす。だが、ネット専業銀行は新しいサービスが多く、人が必要な状況が続いている」と解説する。
(つづく)