装いをかえた非対面・住宅担保融資
韓国にインターネット専業銀行が設立されてちょうど5年。発足当時、「期待半分、憂慮半分」といわれたネット銀行はその後、金融市場をどう変えたのでしょうか。(シリーズ1/6)
◇貸出資産の急拡大
カカオバンク(Kakao Bank)――発足初年度の2017年末、貸出残高は4兆6218億ウォンだった。それが2021年末には25兆8614億ウォン。4年間で5.6倍だ。
Kバンク(K-Bank)――2017年4月3日に発足した韓国初のネット銀行。貸出資産は8200億ウォンから7兆900億ウォンに。8.6倍に拡大した。
発足後、「銀行と商業の分離規制」によるKバンクの増資遅延や、2021年の金融当局による強力な家計融資規制で、ネット銀行の営業環境が芳しくなかった。こうした経緯を考慮すれば、この成長ぶりには大きな意味がある。
ネット銀行の成長ぶりは2022年に入っても際立つ。この二つに「トスバンク(Toss Bank)」を加えた第1四半期(1~3月)の家計貸付合算残高は36兆1439億ウォン。2021年末(33兆4829億ウォン)の7.9%増。特に、2021年10月の発足直後に貸出営業の中断に追い込まれたトスバンク与信は、2021年末の5315億ウォンから今年3月末には2兆3688億ウォンと、3カ月で4.5倍に成長した。
一方の5大都市銀行(KB国民、新韓、ハナ、ウリNH農協銀行)。2021年下半期から続いている融資規制と融資金利の上昇により、第1四半期の家計融資残高が約6兆ウォン減った。ネット銀行とは対照的だ。
ネット銀行躍進を支えているものは何か。ひとつは非対面・モバイルプラットフォームの高い利便性、もうひとつは手数料と金利の安さ、手厚さ、そしてサービスの新しさだ。それゆえ、若い世代を中心に利用客が急速に拡大しているのだ。
カカオバンクのアプリ加入者は1827万人、Kバンクは750万人に上る。トスバンクも235万人の加入者を確保している。トスアプリの月間アクティブユーザー数(MAU)は、約1400万に成長した。
◇社長も家主も「対面・モバイル融資」
ネット銀行5年にして、韓国のリテール(個人や個人事業主を対象とするもの)融資でのモバイル化と非対面化が急速に進んでいる。ネット銀行3行は、個人信用貸し出しから住宅担保貸し出し、個人事業者貸し出しまで、急速に事業を拡大し、金融界が変貌している。ネット銀行の攻撃的な価格(金利)・サービス革新競争が、消費者の利便性改善につながっているという評価もある。
その半面、信用度の高い人に集中するなど、既存の銀行のシステムを踏襲しており、ネット銀行にアクセスするのが難しい高齢層など、デジタル疎外層への配慮が足りないという指摘もある。
融資ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)も、信用融資、賃貸住宅融資に続き、住宅担保融資、家計融資的な企業融資である個人事業者(自営業者)融資にまで拡大している。リテール分野で、ネット銀行がもたらしたモバイル・非対面化が加速しているわけだ。
カカオバンクは2022年2月、「チャットボット」(人工知能を活用した自動対話プログラム)の対話型インターフェースを使ったモバイル住宅担保融資を始めた。その融資は約1カ月で1000億ウォン以上に。融資対象をKB不動産の相場(9億ウォン)以上に拡大し、融資限度を6億3000万ウォンから10億ウォンに引き上げた。
トスバンクも同月、ネット銀行初の個人事業者向け融資を開始、3月末に融資残高2000億ウォンを突破した。Kバンクは今月18日に個人事業者向け融資の開始を予定していた。カカオバンクも2022年下半期に小規模個人事業者(SOHO)向け融資を開始する。
銀行関係者はこう予想する。「銀行業界が、投資業務(IB)と、大企業中心の大手都市銀行、モバイルリテール中心のネット銀行に再編される」
(つづく)