韓国ロッテグループのシン・ドンビン(辛東彬、日本名・重光昭夫)会長が「ニューロッテ」の完成のために奔走している。8月の特別赦免(恩赦)により、経営活動の制約になっていた司法リスクがなくなり、シン会長は各国の主要事業地を自ら見て回って販路開拓に乗り出すなど、幅広く活動している。
◇にじむ切迫感
シン会長は昨年11月、故シン・ギョクホ(辛格浩)名誉会長生誕100周年行事で「新たなロッテを作っていく道に、創業主自らが実践した挑戦と情熱のDNAは、この上なく大切な資産になるだろう。創業精神を深く胸に刻みながら、みんなの意志を集め、未来のロッテをともに作っていこう」と表明した。
グループの主要事業はこの3年間、「逆成長」だった。これ以上放置できない――シン会長はこう判断し、流通事業の構造調整を大々的に進めた。また、実力のある外部人材を大挙して迎え入れ、50年間続けてきた「純血主義」組織の文化まで破った。
特に、大きな変革が求められたのが、流通事業だ。百貨店、マート、コンビニ、家電量販店、ホームショッピング、ホテル……。この数年間、実績が低迷してきた。
実績不振を打開し、新たな成長動力を見いだす。ロッテの変革は、シン会長の切迫感のにじみ出た、ある種の「ショック療法」と言える。
◇不振の200店整理
シン会長は2017年、ロッテ創立50周年を迎え、「果敢な革新でロッテを変える」と述べ、「ニューロッテ」を掲げた。だが、いわゆる「兄弟の乱」以後、捜査が続いたため、「ニューロッテ」プロジェクトはしばらく中断されていた。
2018年に経営に復帰したシン会長は同年末、人事を通じて役員の世代交代を進めた。2019年には系列会社全体の40%に当たる22社の代表を交代させるという異例の人事を断行したのだ。
2020年8月にはファン・カッキュ副会長が勇退するサプライズ不定期人事を断行。定期人事も1カ月ほど繰り上げた11月に実行した。
「ロッテフード」「ロッテ七星(チルソン)飲料」「ロッテGRS」など食品会社を含む、13の系列の代表を一度に交代させた。さらに600人余りの役員のうち30%が退き、10%が任命され、100人余りの役員ポストが消えた。ライバル社に遅れを取っている――これに対するシン会長の問責人事だった。
シン会長は当時、不振続きの流通事業にもメスを入れ、強力な構造調整を断行した。収益を出せない事業は大胆にたたみ、不振なスーパーなどもすべて閉店させた。
廃業した店舗だけでも2年間で200店舗を超える。「ロッテショッピング」全体のオフライン売り場の30%を整理したのを手始めに、本格的な体質改善が始まった。(つづく)
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