急がれる実態の把握
韓国で今、就職難や家庭不和、いじめなど多様な理由で、部屋のドアを閉ざしてしまういわゆる「隠遁型一人ぼっち」(ひきこもりを表す韓国語)が増えています。実情を探りました。(シリーズ3/4)
◇公式的統計がない
「ひきこもり問題はこれ以上、家族内問題と見ることはできない。行政が積極的に乗り出さなければならない」
ソウル市青年政策未来青年企画団のキム・チョルヒ団長はこう訴えた。
ひきこもりがどれほどいるのか、彼らの生活実態と特性はどうなのか――こうした正確な現状を把握し、総合的、体系的支援策を整えることが必要だ、と指摘する。
実際、韓国にはひきこもりと関連した公式的統計がない。ソウル市が市内居住の満19~39才の青年を対象にひきこもり実態調査に着手したのもそのためだ。
対人関係や社会進出などに困難を来たしている「ひきこもり」支援のため、初めて深層調査に乗り出したのだ。
「求職を断念した者の統計数値と、ひきこもりの推定値しか把握できていないのが実情だ。年末に結果が出れば、彼らに対する体系的なオーダーメード型支援を拡大する」
市関係者はこう説明した。
◇ビッグデータで実態分析
今回の実態調査とは別に、ソウル市は、ひきこもりを探すのにビッグデータ技術を活用することにした。通信会社が保有している通信情報と、クレジットカード会社が持つ消費・信用データを、公共データとひもづける。これにより、ひきこもりを探し出すというのだ。「ビッグデータで実態分析を進め、これに基づいた支援策まで整備する」(市関係者)
市はこれまでも、ひきこもり支援プログラムを運営している。
昨年に開発した「社会的孤立尺度」を活用し、ひきこもり1000人を対象に、孤立程度によって▽密着相談▽事例管理(生活管理、過程モニタリング)▽自信回復▽進路探索▽就職力強化――などの支援をしている。対象者200人には、青年同士が規則的な生活習慣を形成し、意思疎通の方法を身につける「共同生活」に参加してもらっている。
◇無関心の中で放置され…
他の地方自治体も、社会的関係が断絶したひきこもりの支援に乗り出している。
光州市が2019年、全国で初めて「ひきこもり支援条例」を作り、今月1日には韓国で初の「ひきこもり支援センター」を建設した。
ソウル、釜山などがこの条例にならうと同時に、中央政府レベルでも支援策作りも始まった。
ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権の110大国政課題の中に、求職を放棄した人やヤングケアラーや、ひきこもりなど要支援青年を対象にした「青年跳躍準備金」(仮称)新設を検討し、彼らの求職・自立意欲を高めることにしたのだ。
ソウル研究院都市社会研究室のピョン・クムソン副研究委員は次のように訴える。
「ひきこもりを直接訪ねて、再び社会に招き入れるための政策的努力が不在であり、数多くの青年たちが無関心の中で放置されている。今からでも遅くない。政府レベルでの実態調査をはじめ、体系的な支援策が必要だ」
(つづく)
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