主人公の役、研究を尽くして…
韓国のドラマ・娯楽チャンネル「ENA」で6月29日に始まった全16話の「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が視聴率を次々に更新しています。天才的な頭脳と自閉症スペクトラム障害を併せ持つ弁護士の物語が、なぜここまで韓国の視聴者をひきつけるのか、その背景を考えてみました。(最終回)
◇障害を持つ人、その家族の共感
ドラマの中心にいる俳優はタイトルロールのパク・ウンビンだ。独特な言葉遣いや表情、身振りなどで、自閉症スペクトラム障害を持つウ・ヨンウのキャラクターを繊細に描き出している。反響語の使用、ペットボトルの並び替え、クジラに執着する姿など、自閉性障害を持つ人の特徴を自然に表現している。
これらは、パク・ウンビンがキャラクターについて悩み、試行錯誤を繰り返した結果だ。それゆえ、視聴者のみならず自閉症スペクトラム障害を持つ人やその家族の共感まで引き出している。
パク・ウンビンは製作発表会で「キャラクターへの誤ったアプローチ」「演技により誤った認識を植え付ける」ことへの懸念を口にしていた。
これを払しょくするため、自閉症スペクトラム障害の四つの診断基準を勉強し、学者からアドバイスを受けた。いかにして、誰にも不快感を与えず、キャラクターになりきることができるか――この点を研究を尽くした結果が、まさにドラマにおけるウ・ヨンウだった。
評論家のチョン・ドクヒョンは次のように評価する。
「ウ・ヨンウは、現実にファンタジーが加わったキャラクターに思える。『自閉』という言葉で思い浮かぶイメージはなじみの薄いものだが、ウ・ヨンウのキャラクターは、かわいらしく、純粋な子供のように見える。自閉が持つ特徴を解きほぐしながら、視聴者にはファンタジーも示さなければならない。その両者が重なる部分をキャラクターもよく見いだし、演技でもしっかり表現されていた」
チョン氏によると、「良い演技」だと評価されるには、二つの要素が必要だ。まず、人物のキャラクター設定が良いこと。次に、俳優がそれをきちんと理解していること。そしてこの二つがかみ合うこと。「ウ・ヨンウの場合、キャラクター設定は良く、その魅力を、パク・ウンビンが演技によって2倍以上に引き上げた」と分析している。
◇“視聴者の視線”をはっきり
「ウ・ヨンウ」を支えるのは主人公だけではない。彼女を取り巻く人々もストーリーに躍動感を吹き込み、物語をリードする役割を果たしている。
訟務チームの職員イ・ジュノ(カン・テオ)は、ヒューマニズムに満ちたこのドラマにときめきを加える。イ・ジュノは初めて会ったウ・ヨンウが自閉症スペクトラム障害であることに気づいても、偏見なく接し、配慮する。
業務でウ・ヨンウを助けながら彼女の温かい一面に接したイ・ジュノは、ひかれていく心を徐々に悟っていく。イ・ジュノ役を務める俳優カン・テオは、ドラマの中のウ・ヨンウに対する感情変化を細かく表現している。ドレスを着たウ・ヨンウに惚れる表情、ウ・ヨンウを苦境に陥れる友人をそれとなく怒る姿――こうした場面は、ますます深まるイ・ジュノの心を映し出している。
法務法人ハンバダのシニア弁護士であるチョン・ミョンソク(カン・ギヨン)は、自閉症症スペクトラム障害を持つウ・ヨンウに対する“視聴者の視線”をはっきりと投影した人物だ。
初回でチョン・ミョンソクは、ウ・ヨンウに会った後で偏見を抱き、新人として事務所に採用することに反対する。しかし、ウ・ヨンウの前で「普通の弁護士」という表現を使ったことを謝罪する。
評論家のチョン・ドクヒョンは「チョン・ミョンソクは注目すべきキャラクターだ。この作品は、偏見がなければただのファンタジーだ。だが、チョン・ミョンソクが抱いていた偏見が変化し、共感を抱くようになる。このような上司がいてこそ、ウ・ヨンウも活動できるようになる」と説明した。
◇それぞれの俳優がそれぞれの役割を存分に
これまでドラマ「ああ、私の幽霊さま」「キム秘書はいったいなぜ」「私の後ろにテリウス」などの作品に出演し、欠かすことのできない役割を十分に果たした俳優カン・ギヨンは「ウ・ヨンウ」で演技力を花開かせた。
本人の持ち味である自然な演技をしながらも、「メンター」として後輩の成長を促す姿もキャラクターに溶け込ませた。特に「メンティー」であるウ・ヨンウとの相性はぴったりで「サブ・パパ」というニックネームを得たりもした。
バラエティー番組「SNLコリア2」にレギュラー出演し、インターン記者「チュ記者」のコントで大きな話題を集めたチュ・ヒョニョンは「ウ・ヨンウ」を通じ、演技を見事に自分のものにする姿を見せている。ウ・ヨンウの友人「トングラミ」に扮した彼女は、ややもすると重くなりかねないストーリーの中で、弾む魅力を見せ、潤滑油の役割を果たしている。
ウ・ヨンウと交わす愉快な挨拶方法や、本人ですら認識していないイ・ジュノの心に気づいて恋愛をコーチする「トングラミ」は、ほかにはないキャラクターだ。コケティッシュなチュ・ヒョニョンが演じることで、相乗効果を発揮している。特に、7月7日に放送された第4回のエピソードで、彼女の演技は光を放った。チュ・ヒョニョンは「校内暴力の報復」「祭祀の大騒ぎ」のシーンで、自分の特技を遺憾なく発揮して話題を集めた。
その他にも自閉性障害者を育てながら孤独に暮らしてきた父親のウ・グァンホ(チョン・ベス)、ロースクール時代にウ・ヨンウを優しく面倒を見た同僚のチェ・スヨン(ハ・ユンギョン)、能力に優れたウ・ヨンウをライバルと認識するクォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョク)ら、多彩なキャラクターが「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の中に息づいている。
実在しそうな人物と思われるほど、よく作り出されたキャラクターといえる。彼らの生き生きとした演技が重なり合い、視聴者は「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」にひきつけられている。
(おわり)
「なぜ『ウ・ヨンウ』に惹かれるのか」はnews1のユン・ヒョジョン、キム・ミンジの両記者が取材しました。
©news1