2024 年 12月 26日 (木)
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[KWレポート] なぜ「ウ・ヨンウ」に惹かれるのか (1)

「模倣」を排除した演技

写真提供=ENA©news1

韓国のドラマ・娯楽チャンネル「ENA」で6月29日に始まった全16話の「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が視聴率を次々に更新しています。天才的な頭脳と自閉症スペクトラム障害を併せ持つ弁護士の物語が、なぜここまで韓国の視聴者をひきつけるのか、その背景を考えてみました。(シリーズ1/3)

◇ストーリー性への支持

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」はパク・ウンビン扮する弁護士「ウ・ヨンウ」が、多様な事件を解決し、真の弁護士に成長するという心温まる物語。視聴率は0.9%(ニールセンコリア全国有料世帯基準)でスタートしたが、回を追うごとに視聴率は上昇し続け、7月27日放送の第9回は15.8%を記録した。

視聴者が「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を支持するのは、そのストーリー性だ。

毎回、弁護士ウ・ヨンウが引き受ける事件を一つずつ紹介する形式が取られている。

各事件には、異なる目的と考え方の依頼人が登場する。彼らとの関わりを通して、また事件を解決するプロセスを通して、ウ・ヨンウが社会というものを少しずつ学び、成長していく。

世の中に不慣れなまま、第一歩を踏み出したウ・ヨンウは、自分の考えるやり方で、社会通念と偏見を打ち破っている。誰よりも法を好み、先入観なしに、隠された争点を導き出す。そんなウ・ヨンウの力強い活躍を、視聴者は心から応援しているわけだ。

◇ウ・ヨンウの目を通した世間と、向けられる視線

ウ・ヨンウの愛らしい魅力に加え、彼女を取り囲む心温かな人々が、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の物語に厚みを加えている。

これまでテレビには、権謀術数や陰湿に満ちた法廷モノや、血が飛び散る残忍なジャンルの番組があふれていた。ただ、視聴者は今回、「優しいドラマ」が持つさまざまな力を目の当たりにしている。

このドラマは、ウ・ヨンウの目を通した世間というものを見せている。

同時に、ウ・ヨンウに向けられる視線も盛り込んでいる。

ウ・ヨンウと一緒にいるだけで「ボランティア活動」と考えてしまう。自閉症スペクトラム障害を理解できず「精神薄弱」だと判断してしまう。配慮を装った「排除」の視線、ウ・ヨンウを、弁護人である前に「自閉症」だと片付けてしまう――。

こうした視線に直面し、ウ・ヨンウは萎縮することもある。だが、偏見を乗り越えて、自らの力でさまざまなことを理解し、尊敬する同僚たちとともに成長しようとするのだ。

写真提供=ENA©news1

◇4つの診断基準を勉強

このドラマに、自閉症スペクトラム障害に対する社会的な認識を高める効果がある、という評価もある。

視聴者は毎回、自閉症スペクトラム障害について多くを知り、彼らが置かれている環境について多様なコメントを出すようになる。

最近、ドラマ「私たちのブルース」にダウン症の俳優チョン・ウネが出演し、彼女が登場した映画「君の顔」も公開された。さらに今回、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」までヒットし、映像コンテンツにおける障害の扱われ方、社会的視線に対する多様な意見が示されている。

もちろん、こうした意見の中には、自閉症スペクトラム障害を「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の中で、素材として、あるいは人物の特性として使われている点を「残念だ」ととらえる反応もある。ただ、これは製作側、出演者側が、企画段階から慎重に検討し、受け入れてきたことでもあった。

パク・ウンビンは製作発表会でこんな話をしていた。

「私が演技をするということ自体が大丈夫なのか、疑問が生じた。メディアを通じてつくりあげられた(自閉症スペクトラム障害を持つ)キャラクターをまねしたくないので、“模倣する”という行為を真っ先に排除した」

キャラクターに対して、誤ったアプローチをしていないか。演技をしながら、誤った認識を植え付けていないか――パク・ウンビンはこんな懸念を抱えつつ、自閉症スペクトラム障害の4つの診断基準を勉強することに努力を傾けたという。

◇「たくさんの準備をして表現」

発達障害児童の家族であり、支援活動をしているある視聴者は、こんな感想を抱く。

「ウ・ヨンウのように、高機能自閉症のケースは非常に珍しい。だから一般的な事例とは考え難い。それでも、物語や説明を見ると、たくさんの準備をして表現しているようだ」

ドラマでは、ウ・ヨンウ自身が自閉症スペクトラム障害であることを認識し、そのことを説明する場面が出てくる。これによって、自閉症スペクトラム障害に対する視聴者の認識を改善できるのではないか――こんな期待感を抱いているという。

発達障害児童支援事業を担う他の視聴者は次のように話している。

「このドラマを通じて、自閉症スペクトラム障害とは何なのか、これをメディアでどのように扱うのが良いのか議論されること自体、肯定的なことだ」

同時に、自閉症スペクトラム障害の人が成長するプロセスにおいて、彼らが経験する困難や家庭が直面する社会的制度の不備についても取り上げてほしい、と求めた。

(つづく)

©news1

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