2025 年 8月 3日 (日)
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[KWレポート] お菓子からリゾートへ、ロッテが仕掛ける日韓連携とウェルネス戦略 (下)

ロッテアライリゾート=ロッテホールディングス提供(c)KOREA WAVE

東京からほぼ2時間。北陸新幹線「上越妙高駅」(新潟県上越市大和)に着くと、そこからシャトルバスが出ている。大毛無山(おおけなしやま)に向けて車で進むと、30分ほどで、北欧の山荘をほうふつさせる建物があらわれる。

新潟県妙高市の「ロッテアライリゾート」。滑車にぶら下がってワイヤを滑り降りるジップライン、夏の高原でのツリーアドベンチャー、秋の山で紅葉ハイクと温泉、冬はスキー。全257室の客室は長期滞在に適している。温泉・スパ・プール・多彩なダイニングも楽しめる。

ただ、この「ロッテアライリゾート」のこれまでの道のりは必ずしも平たんではなかった。

◇大自然を生かした集客

2025年1月28日、妙高市の新井商工会議所の議員新年懇談会が市内で開催された。その様子を新潟日報(2025年2月1日付)が報じている。

この席でロッテアライリゾートを運営する「ロッテホテルアライ」の福井朋也社長が語ったのは、次のような話だ。

「ロッテホテルアライは開業以来、赤字続きだが、売り上げ管理や費用管理を徹底することで赤字幅は年々縮小し、2025年度の黒字化を目指している。従業員と意思疎通を図り、成長への方向性を共有しながら、利益を出す体質を作る」

「冬以外にも楽しめるリゾートへの転換も目標だ。夏の集客が冬を上回った長野県白馬町の施設の例もある。妙高も大自然を生かした集客ができる」

「昨年は紅葉遊覧飛行、花火などのイベントを開催し、リゾート全体の売り上げが前年比2割増となった」

「将来的に標高1000mの敷地内に展望テラスやカフェを設けるなどして、世界水準で楽しめるリゾートにしたい」

ここで期待を寄せるのが(上)で触れた「ウェルネスツーリズム」だ。

ロッテホールディングスが妙高市との間で交わした「包括連携協定」には、ロッテ側に「地域のコンテンツとアライリゾートを掛け算して地域の活性化に取り組んでいきたい」(ロッテホールディングスの玉塚元一社長)、妙高市側に「ロッテホールディングスのさまざまな資源や財産・価値を、妙高市が抱える人口減少や地方創生に役立てていきたい」(城戸陽二市長)という、それぞれの思惑がある。

ロッテアライリゾート=ロッテホールディングス提供(c)KOREA WAVE

◇クアオルト

豊かな自然を有する妙高市は、日本でも有数の「クアオルト」と言われている。

「クアオルト」はドイツ語で「療養地・健康保養地」を意味する。「気候性地形療法」(地形と気候を活用した野外運動療法)が起源で、自然環境や傾斜地を生かして歩行負荷を調整しながら心身の健康を促進する。ドイツでは、心筋梗塞後のリハビリや高血圧・骨粗しょう症などの治療に医学的根拠のある療法として実施されてきた。

日本における「クアオルト健康ウォーキング」は、このドイツ式の療養法を日本の気候・風土に合わせて応用したプログラムだ。「がんばりすぎず、心地よく」をモットーに、心拍数・体表面温度・血圧などを計測しながら、専門ガイドの指導のもと、安全・効果的に歩く。

ロッテアライリゾートのフォレストウォークコースが「クアオルト健康ウォーキング」の認定コース「クアの道」に認定されたことから、2024年からは妙高市とともに定期的に市民向けイベントを開催している。

この取り組みをさらに充実させ、リゾートの活性化と観光促進の強化を目指す――これが今回の包括協定の狙いといえる。

ロッテアライリゾート=ロッテホールディングス提供(c)KOREA WAVE

◇体験する健康法

妙高の森で体感するクアオルト健康ウォーキング。体験者が語るのは「普段の散歩とは異なる“意識的な歩行”」という感覚だ。

コースは高原の緩やかな起伏とともに始まる。専任のガイドが同行し、ポイントで止まって心拍数を測る。

クアオルト健康ウォーキングのポイントの一つが「がんばらない」こと。ウォーキング中に時折、心拍を測定し、「160マイナス年齢」という数値を目安に歩行速度を調整する。目安より高ければゆっくり、低ければ腕振りを大きくして負荷を調整する。心がけるのは、運動リスクの軽減につなげる「無理のない歩行」だ。

10分ほど歩くと、背中に汗がにじみはじめる。平坦に見えていた道でも、ほんの少しの傾斜が体に負荷をかける。

ここで、もう一つのポイント「冷たくさらさら」。汗をかいたり暑くなったりしたら、襟元を開ける▽袖をまくる▽1枚脱ぐ――などで汗を蒸発させ、体温がやや冷える感覚(皮膚温が2度ほど低下)になるよう衣服を調整する。肌を「冷たく、さらさらな状態」に保つことで毛細血管が収縮し、血流が筋肉に集中することによって酸素・栄養供給が効果的になり、運動効果がアップする。

加えて重要なのが呼吸だ。参加者たちは、吐いて、吐いて、吐いて、吸って――という「三呼一吸」を繰り返していた。これがセロトニン(脳の神経伝達物質のひとつで「気分の安定」「幸福感」に関与していることから「幸せホルモン」とも呼ばれる)の分泌を促す。この際、ガムをかみながら歩いたり、自然の中でヨガ式呼吸を繰り返したりすることも、セロトニン分泌に寄与するという。

あえてがんばらず、自然の音や風を楽しみながらゆったりと歩く。コースには「ヤッホーポイント」が設置され、大声を出すことによって呼吸を深めたりもする。

妙高の自然のなか、歩くだけで心身がリセットされていく感覚が芽生える。単なる運動ではなく、まさに“体験する健康法”だ。

(c)KOREA WAVE

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