50年前に産声を上げたKデザイン
競争力はデザイン。たとえ性能が抜群でも、美しくなければ売れない――。AppleのiPhoneも始まりはデザインでした。「デザイン強国」への道のりで試行錯誤する韓国企業の姿を探りました。(シリーズ2/計3回)
韓国においてデザインは輸出の原動力である――これに気づき、積極的な投資を始めたのは、パク・チョンヒ(朴正煕)政権時代にさかのぼる。
韓国政府は1970年、韓国デザイン振興院の前身である「韓国デザイン包装センター」を設立し、1977年にはデザイン振興のための法的根拠として「産業デザイン振興法」を設けるなど、早い段階からデザイン育成政策を展開してきた。
1999年からはデザイン産業を育成するため、現在の産業通商資源省が主催し、韓国デザイン振興院が主管する「大韓民国デザイン大賞」を選んできた。
デザイン産業の競争力アップに貢献した組織、企業、個人を称賛・激励してデザインの重要性を広め、国民のデザインに対する意識を高める――という目的があった。
昨年10月6日に開かれた第23回授賞式では、現代自動車のプレミアムブランド「ジェネシス(GENESIS)」などをデザインした同社のイ・サンヨプ(李相燁)専務が、個人部門で最高の栄誉である「銀塔産業勲章」を受けるなど、31個の勲章・褒章と表彰が企業や個人、地方自治体などに授与された。
産業通商資源省のデザイン産業統計調査によると、韓国のデザイン産業の規模は2019年で18兆2900億ウォンで、産業従事者は33万6000人。経済的価値は128兆3000億ウォン程度に達するという。
◇世界はデザイン戦争中
主要先進国も、早くからデザインの持つ波及効果に注目し、積極的に投資してきた。
英国のサッチャー政権(1979~90)は1980年代、デザイン政策を強調し、デザインを「創造産業」に分類して束ね、デザイナーとデザイナー、企業と企業を結びつけた。2012~17年、デザインを含む芸術教育プログラムだけに5億8000万ポンドを投資するなど、英国は人的資源の開発に集中している。
シンガポールは2019年、デザイン業務を情報通信省から貿易産業省傘下に移管し、経済成長をけん引する産業としてデザインを据えた。2015年には「デザインマスタープラン委員会」が国家デザイン戦略を発表、シンガポールのデザインブランドを開発することにした。個人、企業、教育エキスパートらが全国民に向けて、カスタマイズされたデザイン教育も提供する。
日本は2017年、経済産業省にデザイン、ファッション、展示などを担当する「クールジャパン政策課」を新設し、デザイン政策室をその下に置いた。特許庁にもデザイン統括責任者(CDO)を設置し、デザインと知的財産権関連政策の総括を任せた。経済産業省の研究会は毎年、時代の変化に合わせたデザイン政策を研究し、報告書を発行している。
「現在のグローバル市場のトレンドを見ると、感性的な価値の加わったカスタマイズ型製品と、サービスが市場を主導している。この点でみれば、デザインとデザイナーの役割が非常に重要になっている」
韓国・産業通商資源省の関係者はこんな認識を示したうえ、デザインが産業のイノベーションを導けるよう、政府・業界が努力すべきだと指摘した。
(つづく)