2025 年 9月 21日 (日)
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[KWレポート] 「36分に1人が命を絶つ国」韓国社会の未来に迫る影 (5)

この4年間の保健福祉省の自殺予防事業の予算。単位・億ウォン、()は前年比。青色は国費、赤色は地方費=資料・保健福祉省(c)MONEYTODAY

「1514ウォン(約160円)」

これは2025年、韓国国民1人あたりに配分された自殺予防事業の予算額だ。あまりにも不十分なこの予算が、自殺予防政策がまともに機能しない最大の要因として指摘されている。海外で成功を収めた政策の多くを導入してはいるが、予算の不足により現場には定着していないのが現状だ。

◇ 自殺予防の国費は7倍に増加したが、それでも不足

保健福祉省によると、今年の自殺予防予算は総額782億5000万ウォンだ。うち、国費は587億5000万ウォン、地方費は195億ウォンで構成されている。7月時点の韓国の人口(5168万4564人、統計庁)で割ると、国民1人あたりの自殺予防予算は1514ウォンとなる。

現在の予算の75%を占める国費は、10年前(2015年)の89億ウォンと比べて約7倍に増加している。それでも自殺問題を解決するにはあまりにも不足している。予算を増やしたにもかかわらず、自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は2015年の26.5人から昨年(2024年)には28.3人へとむしろ上昇している。

現行の自殺予防政策には、海外の成功事例が多数取り入れられている。たとえば、フィンランドの心理学的剖検、オーストリアの自殺報道ガイドライン、日本の地域基盤型自殺予防インフラ、英国のエビデンスベースの心理療法アクセス改善(IAPT)などだ。

◇十分に機能しない政策

しかし、予算が十分に伴っていないため、こうした政策が十分に機能していないという指摘が出ている。特定の高リスク群や地域に焦点を当てた「ターゲット型政策」が全面的に実施できない背景にも、予算不足がある。

代表的な事例が「心理学的剖検」制度。2015年に導入された心理学的剖検は、自殺者が残した記録や遺族へのインタビューなどを通じて、自殺の原因を解明する政策だ。自殺者の心理・行動的要因を分析した心理学的剖検の結果は、自殺予防政策の策定において主要な基盤として活用される。1987年に心理学的剖検を初めて導入したフィンランドは、これをもとに効果的な政策を策定し、自殺率を大きく下げることに成功した。

韓国では2015年からの9年間で、心理学的剖検が実施された自殺事例は1099件にとどまる。この間の自殺者数11万9968人に対し、わずか0.92%だ。フィンランドが心理学的剖検初年度に実施した件数(1397件)よりも少ない。今年の心理学的剖検に割り当てられた予算は、たったの3億ウォンで、過去5年間、一度も増額されていない。

(c)MONEYTODAY

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