内需に頼るより、大きく成長
「『井の中の蛙』では成長に限界」。これが韓国スタートアップの共通認識です。国内で成果を収めてもビッグにはなれない、それよりも「無限の可能性」にかけ、グローバル市場に打って出る――。世界に目を向ける「K-スタートアップ」の試行錯誤の現状を取材しました。(シリーズ1/3回)
◇核心技術はグローバル市場で通じる
韓国では既に、スタートアップの時代が到来している。2021年のベンチャー投資額は過去最大の7兆ウォンを超え、ユニコーンも大きく増えた。専門家は「第2ベンチャーブーム」とも表現する。ただその大多数が内需中心のB2C(企業と消費者間取引)企業だ。
市場が限られた韓国国内では成長に限りがある。先進国並みに飛躍するためには、グローバルが不可欠だ。韓国スタートアップのグローバル化のレベルはまだ低い。だが可能性は無限だ。素早く海外に打って出たスタートアップには意味のある成果を出したところもある――。
仮想現実(VR)やメタバース技術のスタートアップ「スリーアイ(3i)」。2015年の創業当時から海外市場を念頭に海外支社を運営してきた。複数の国で同時に事業をするのは容易ではない。それを可能にしたのは「核心技術はグローバル市場で通じる」という自信だった。
最初は苦戦の連続だった。だが、製品・サービスが徐々に口コミで広がり、2019年に34億ウォンだった売上は、2020年には178億ウォンに伸びた。同じ期間、雇用も35人から69人に増え、「スリーアイ」の規模は瞬く間に膨らんだ。いま、この1~2年でユーザーを10億人まで増やすという野心を抱く。
新型コロナウイルス感染のパンデミックが世界各地に影を落とし、景気が低迷する。そんななかでも、一部のスタートアップ企業は、海外市場の攻略に打って出ている。そうした企業は、内需に頼るスタートアップより、大きく成長している。業績成長に伴い人手も必要となるため、雇用創出にも積極的だ。
デジタル大転換時代、スタートアップの生態系がより豊かになるためにも、韓国経済の中心軸にスタートアップが位置づけられる必要がある。そのためにも、スタートアップのグローバル化を急がなければならない。
◇海外売上の割合が高いほど売上全体が増加
MONEY TODAYは韓国中小ベンチャー企業省とともに、2021年のベンチャー企業精密実態調査を分析した。
その結果、「創業7年以下のスタートアップのうち、海外で売上がある企業」の平均売上は2020年48億9000万ウォンだった。前年の調査結果は43億3400万ウォン。12.8%も伸ばしているのだ。一方、海外での売上のない内需スタートアップは計23億6000万ウォン。前年(21億8600万ウォン)より8.0%の伸びにとどまった。
特に、海外売上の割合が高いほど、売上全体の増加傾向も顕著だ。海外の割合が20%以上のスタートアップの平均売上は計58億3700万ウォン。前年調査(46億3800万ウォン)比で25.9%も伸ばした。内需基盤のスタートアップの売上増加率(8.0%)の3倍以上をマークした。
2020年は新型コロナウイルス感染で世界の景気が低迷した年だ。大企業と一般中小企業の平均売上がそれぞれ-10.5%、-7.2%と減少。1997年のアジア通貨危機以来初めて国内総生産(GDP)がマイナスを記録した。4大グループも、サムスンを除けば、現代自動車(-2.2%)、SK(-13.0%)と売上が減り、LG電子も0.8%増に止まった。全般的な景気低迷の中、海外進出のスタートアップだけが10%台の高成長を遂げたという評価だ。
雇用も同様だ。海外進出のスタートアップで大幅に増加している。
海外売上のあるスタートアップの平均従事者は20.1人と、前年(16.6人)より21%増加した。一方、内需基盤のスタートアップの平均従事者は11.8人と、前年(12.4人)より減った。
平均雇用でも、海外売上の割合が20%以上のスタートアップが22.6人。人数も増加率(33.7%)も、ともに一段と高いことが調査の結果わかった。
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