2025 年 8月 19日 (火)
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[KWレポート] 「宿命のパートナー」日韓、トランプ時代に芽吹く新たな共闘 (4)

キム・ユス(金有洙)韓国基礎科学研究院(IBS)量子変換研究団団長(c)MONEYTODAY

多くのノーベル賞受賞者を輩出している日本の基礎科学研究機関「理化学研究所(RIKEN)」。ここで韓国人として初めて「終身職主席科学者」に任命された化学者、キム・ユス(金有洙)氏。光州科学技術院(GIST)教授で、韓国基礎科学研究院(IBS)量子変換研究団団長だ。キム・ユス氏はMONEYTODAYとのインタビューで次のように語った。

「韓国と日本は互いに異なる強みを持ちながら、いずれも強固な科学技術の“筋肉”を備えています。両国の長所を組み合わせれば、“短期的成果”と“長期的革新”の両方を実現する研究エコシステムを構築できるでしょう」

2024年9月、国内機関の招きで28年ぶりに韓国へ帰国したキム・ユス教授は、日韓共同研究の「基礎体力」を築くことに力を注いでいる。RIKENで培った研究基盤を韓国に構築する一方で、両国の博士課程学生、ポスドク、新進気鋭の教授らが研究キャリアのあらゆる段階でRIKENとIBSを自由に行き来し、継続的に研究できる交流制度を整備した。

キム・ユス教授は「久しぶりに体験した韓国の研究環境は、スピードと効率性の面で非常に優れていた。意思決定が速く、目標に向かって行動し、必要なインフラや資源を短期間で集中的に整備する能力は、日本より勝っている」と評価する。

一方で、日本の研究環境には長期的視野と安定性という強みがあるとし、「長期間の失敗にも耐えられる支援構造、研究者の自律性を尊重する文化、成果よりもプロセスと完成度を重視する姿勢が、日本の研究の特徴だ」と指摘する。

韓国特有のスピードと効率性は研究競争力を高めることができ、日本のスタイルは新たな発想や深い探究を蓄積するのに適している。日本と韓国は補完的な性格を持つからこそ、協力を通じて独自の研究エコシステムを築くことができる――キム・ユス教授はこう展望したうえで、次のように提言した。

「韓国で始まったアイデアを日本で長期プロジェクトとして深化・発展させる、あるいは日本で蓄積された基礎研究や経験を韓国の産業・応用ネットワークに素早く拡散させる、というような交流の形も考えられる」

韓国地質資源研究院宇宙資源開発センター長のキム・キョンジャ氏=韓国地質資源研究院(c)MONEYTODAY

◇双方向の協力体制

「これまで日本の科学技術が韓国より進んでいたのは事実だ。今では日本側が韓国を(共同研究の)パートナーとして望んでいる。韓国と日本は、月面資源の活用研究、特に資源抽出技術の開発分野で協力が可能だろう」

こんな見通しを示す研究者がいる。韓国初の月探査機「タヌリ」に搭載された「ガンマ線分光計(KGRS)」開発を主導した韓国地質資源研究院宇宙惑星地質研究室のキム・キョンジャ主任研究員だ。

日本の宇宙探査技術は、韓国より10年以上先行しているとされる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2007年に日本初の月探査機「かぐや」を打ち上げ、2020年には「はやぶさ」プロジェクトを通じて人類初の小惑星サンプルを地球に持ち帰ることにも成功した。一方の韓国は2022年に初の月探査機「タヌリ」を打ち上げた。

キム・キョンジャ氏は「かぐや」ミッションに参加した共同研究者のひとり。探査機に搭載されたガンマ線分光計を用いて月の表面の元素分布マップを作成し、これをもとに月の地質を研究した。

「KGRSは最も軽量でありながら最も広いエネルギー範囲を測定でき、多くの科学データを生み出せる次世代型ガンマ線分光計だ。意味のある協力を進めるには、両国の科学者が同程度の研究レベルを持っている必要がある。宇宙地球化学の分野に関しては、韓国は十分な準備ができていると思う」

キム・キョンジャ氏はこうみる。「キューブサット(超小型衛星)など、いくつかの搭載機器の技術においても、技術格差は徐々に縮まりつつある」との認識も示した。

「RAON」研究チーム=IRIS(c)MONEYTODAY

重イオン加速器施設「RAON(ラオン)」を中心とした日韓の物理学界の交流も活発だ。

重イオン加速器とは、電荷を帯びた粒子を高速で加速させ、標的物質に衝突させることで新たな現象を発見する大型実験装置だ。韓国は2022年にRAONを完成させ、世界で5番目に重イオン加速器を保有する国となった。

IBS重イオン加速器研究所の関係者は「RAON以前は、韓国の研究者が日本の重イオン加速器『理研RIビームファクトリー(RIBF)』の研究に一方的に参加する形だったが、今後は双方向の協力体制に変わっていくと期待している」と述べた。

(おわり)

(c)MONEYTODAY

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