メタバース時代を見据えて
韓国が世界で初めて5G(第5世代)移動通信システムを商用化してから2022年4月3日で満3年になりました。新型コロナウイルス感染のパンデミックと非対面時代、5Gは核心インフラとして位置づけられています。現状と課題を考えてみました。(最終回)
◇「キラーコンテンツ」はまだか
「LTEだけ使っていても全然不便がない。だから、5Gを使わなければならない理由がわかりません。スマートフォンでインターネット検索、SNS、動画を見るだけなので、LTEでも、遅いとか滞るとか、感じません」
ソウル在住の30代A氏は、5Gを使わないApple「iPhone11」モデルを2年間使っている。これまでは2年ごと、習慣のように携帯電話を換えてきた。だが、今は変える理由を全く見つけられずにいる。
5Gフォンを利用することで新しいサービスを楽しめたり、何かが大きく変わったりするという期待感がないためだ。
つまり「体感要因」がない。3GからLTEに移る時、YouTubeなど動画ストリーミングサービスの伝送速度が画期的に改善された。だが、5Gではそれがない。B2C市場において、キラーコンテンツの不在は5G拡散の足かせとなる。
◇「何するかが悩み」
これまで、5Gの代表的キラーアプリとして、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)などが挙げられてきた。だが、まだ日常的に使うには難しい段階だ。十分楽しめるコンテンツと、相互作用の基盤がまだ不足しているためだ。
SKテレコムが昨年初め、メタ(旧Facebook)のVR機器「Oculus Quest」を韓国に流通させ、大衆化を早めた。だが、それを使う際、利用者の大半が依然、5Gではなく、家庭用インターネットWi-Fiにつなげて楽しんでいる。
LGユープラスもARグラスの「U+リアルグラス」を、KTはVRサービス「スーパーVR」を発売した。だが、5G活用度を高めるには「力不足」だと指摘されている。
業界関係者はこう打ち明ける。
「LTEサービスの場合、『映像ダウンロード』という明確な目標が決まってから技術が整えられた。だが、5Gは技術が先立ってしまった。事前に“キラーサービス”について十分に考えることもなかった。5Gネットワークが商用化されて3年以上がたち、いまだに5Gで何をするか悩んでいる状況だ」
◇5Gで新たなビジネスチャンス
通信業界がいま、期待を寄せるのが――メタバースだ。AR、VR技術の集合体であるメタバースを、5G時代の「キラーコンテンツ」に押し上げ、生態系の造成に乗り出そうとしている。
メタバースに最も積極的な事業者はSKテレコムだ。
同社は、自社メタバースプラットフォーム「イーフレンド」に年内に仮想通貨を通じた決済システムを導入し、利用者を引き入れる方針だ。
KTはメディアコンテンツコントロールタワーである「スタジオジニ」を中心に知的財産権(IP)、NFTなどの仮想資産を作り、メタバース競争力を備える計画だ。
LGユープラスは淑明女子大に専用メタバースサービスの「スノーバス」をオープンした。また昨年、ユニティコリアとメタバースの技術協力のために業務協定を締結し、年内に「仮想オフィス」サービスを開始する。
このほか、通信会社は5Gによって新たなビジネスチャンスが開かれると期待している。
超連結、超高速、超低遅延を標榜する5Gインフラ構築が加速化し、メタバース以外にも、ロボット、自律走行など新しい革新産業が拡散すると期待されている。
世界移動通信事業者協会(GSMA)のマツ・グレンリード総括取締役は、今年2月に開かれたMWC22開幕基調演説でこう述べた。「今年は5Gに連結される機器数は10億個に達する。これによってドローン、スマートシティ、風力発電など多様な産業が発展するだろう」
(おわり)
「『世界初5G』試行錯誤の満3年」はMONEYTODAYのピョン・フィ、キム・スヒョンの両記者が取材しました。
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