働き口を満たすのは外国人だけ
韓国で求人難が深刻になる一方で、配達アプリケーションなどの労働者はあふれています。決まった職場にとどまらず、スマホ一つを持ち歩きながらお金を稼ぐ「デジタル・ノマド(遊牧民)」。その姿を追いました。(シリーズ2/5)
働き口ではなく、人手が足りない。タクシー運転手などの求人難は日増しに深刻になる。一方、配達アプリケーションなどによる労働者はあふれている。
ウェブを通して単発の仕事を請け負う「ギグエコノミー」はいつの間にか現実となった。「3D」(日本で言う3K、Difficult・きつい、Dirty・汚い、Dangerous・危険)業種の人手不足を解決する方法について考える必要も出てきた。
◇知識や技術、熟練度を高めにくく
問題は――人口構造からみれば、今後、さらに求人難が深刻にならざるを得ない、という点だ。
韓国の生産可能人口(15~64歳)は今後減り続ける。統計庁の将来人口推計によると、生産可能人口は2020年の3738万人から▽2030年3381万人▽2040年2852万人▽2050年2419万人――まで減少する。
正規職よりいわゆる「ギグワーカー」(臨時職)を好む傾向も止まらない。
高麗大社会学科のイ・ミョンジン教授は「労働者の立場では、プラットフォーム労働の方が時間の自由がきき、給料も悪くない。だから一つの代案として浮上した」とみる。
ただ、個人の立場からみれば、プラットフォーム労働に長く携わる場合、将来、所得を高めるために、知識や技術、熟練度を高めることなどが難しい。
韓国開発研究院(KDI)のハン・ヨセフ研究委員はこう警鐘を鳴らす。
「プラットフォーム労働は、職探しに時間的余裕を与えるというメリットがある。ただ、最適な職探しの期間は6カ月~1年だが、プラットフォーム労働への参加期間が長引けば、知識や技術を積み上げにくくなるという副作用があり得る」
◇労組が反対
3D業種を中心とした求人難の即決策として、外国人雇用の拡大などが挙げられる。韓国人が避けるような3D業種に人材を海外から連れて来るというわけだ。
実際、雇用労働省などの関係省庁は、外国人労働者に対する就業ビザ発給の拡大、外国人雇用許可人数の拡大などの案を検討している。
ただ、法務省などは、外国人の流入が急増することで社会的な葛藤が誘発されるなどの事態を憂慮する。韓国労働組合総連盟(韓国労総)や全国民主労働組合総連盟(民主労総)などの労組も、外国人の雇用拡大に反対している。
イ・ミョンジン教授は次のように強調する。
「外国人は、求人難の一時的な代案にはなり得る。だが、移民を(大々的に)受け入れるには、韓国社会は過度に保守的だ。(社会的)費用も考えなければならない。会社ごとにそれぞれ難しい事情もある。だが、社会環境が変わったのだから、労働者の待遇を改善することこそ、求人難の根本的な解決策だ」
(つづく)
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