2024 年 12月 9日 (月)
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[KWレポート] 仮想人間が押し寄せてくる(7)

人間との境界が曖昧に

仮想人間の「リル・ミケーラ」(左)と「ロージー」©MONEY TODAY

広告モデルやアナウンサー、銀行員、アイドル――。「人間固有の領域」と思われていた分野で、人工知能(AI)技術により誕生した仮想人間が縦横無尽に活動しています。「彼ら」が切り開こうとしている世界にどのような未来が広がっているのか考えてみます。(シリーズ7/計8回)

国際社会では既に、仮想人間(バーチャルインフルエンサー)ブームが巻き起こっている。3D(3次元)グラフィックスや人工知能(AI)の発達により、仮想人間に対する拒否感が薄らいだ。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で非対面活動が増加し、仮想人間と人間との境界が曖昧になっているという状況にある。このため、一部の国では仮想人間を活用したマーケティングを規制する動きも出てきている。

バーチャル人間情報サイト「バーチャルヒューマンズ」によると、2021年9月時点で、インスタグラムなどSNSにおいて活動する仮想人間は世界中で122人。3カ月で26人増えた。SNSであまり活動していなかったり、まだ影響力を拡大できていない仮想人間まで含めると200人余りと推定される。

最も高い収益を上げる仮想人間は、2016年に誕生したリル・ミケーラだ。ブラジル系で19歳の歌手という設定のミケーラは、インスタグラムで日常のことや楽曲のリリース、政府の施策に対する意見まで明らかにし、影響力を拡大してきた。シャネルやサムスン電子などといったグローバル企業とのマーケティング協力により、2020年は収益だけでも1170万ドル(約13億2750万円)あったと試算されている。2018年にはトランプ米大統領(当時)やBTSらとともに、米タイム誌が選定した「インターネットで最も影響力のある25人」の一人に選ばれた。

ミケーラをつくったのは、バーチャルインフルエンサー「Ronnie Blawko」や「Bermuda」などの仮想人間も手掛けた米スタートアップ(独自のアイデアで新たな価値を生み出す企業)のブラッド(Brud)だ。2019年に企業価値が1億2500万ドル(約141億8250万円)と見積もられたブラッドは、2021年10月に企業価値76億ドル(約8620億円)に達するカナダのダッパーラボ(Dapper Labs)に買収され、NFT(非代替性トークン=代替不可能なデータ単位)の関連事業に領域を広げている。

(つづく)

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