2024 年 5月 22日 (水)
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[KWレポート] ロシアが韓国半導体を倒すか?

ネオン生産企業「クライオン」危機の影響

2日、ロシア軍の砲撃を受けた住宅街で復旧作業をする住民ら©ロイター=news1

ロシアによる侵攻により、ウクライナの港湾都市オデッサがどうなるのか、韓国で懸念が広がっています。同国の主力産業である半導体の核心素材の生産会社があるためです。状況を整理してみました。

◇「黒海の真珠」

ウクライナに侵攻しているロシア軍が、2022年3月2日(現地時間)に南部の要衝ヘルソンを制圧したと報じられ、西へ145キロ離れた同国の港湾都市オデッサが危機に直面した。「黒海の真珠」と呼ばれるオデッサをロシアが制圧した場合、黒海全域に対する支配力を確保できるようになるため、この地域は戦略的要衝とされている。

また、オデッサには、半導体の核心素材の一つで、大気中の存在量が少ない「希ガス」を生産する「クライオン(Cryin)」という会社がある。ネオン(Ne)やクリプトン(Kr)ガスは、半導体に光を当ててパターンを形成する露光工程や、不要な部分を削るエッチング工程にそれぞれ使われており、半導体生産工程の重要素材だ。

ロシアが2014年にウクライナ南部のクリミア半島に侵攻した時、ネオンガスの価格が600%以上急騰したのも、その特殊性のためだ。世界のネオンの70%以上をこの地域で生産しているだけに、半導体産業には重要な地域だ。

2014年の学習効果で、業界は供給ストップに備えた「非常計画」を作成してきた。半導体業界が「今回の侵攻後は生産に大きな危機はないだろう」と、落ち着いた様子を見せる理由でもある。

しかし、国際情勢の急激な変化で短期的な需給不均衡が供給網の危機をもたらす恐れがあるという懸念も、米国と日本のメディアを中心に提起されている。新型コロナウイルスの感染拡大が作り出した自動車向け半導体部品の供給網崩壊は、記憶に新しい。

自動車向け半導体は、自動車の需要がないため部品の注文をやめても、再注文すればすぐに供給されると思われたが、半導体製造会社は生産をIT製品向けに移しており、需給不均衡が発生した。その後、半導体の品薄を心配した先買いまで加わり、供給不足は深刻化した。このような自動車向け半導体の悪循環は、今後、数年間続くという見通しが一般的だ。

◇希ガス、今後数カ月間の供給に支障はない

希ガスの場合も、これまでに確保した在庫量で問題はなく、代替ガスなどで生産に取り組む企業のため、今後数カ月間の供給に支障はないという分析が業界には多い。

しかし、ロシアのウクライナ侵攻が長期化する場合、生産中断による供給不足と代替ガスを確保するための時間が必要となり、その過程で自動車向け半導体不足の現象に見られた需給不均衡が憂慮されるという指摘もある。過度に心配することはないが、未来の不確かな事態に対応する必要があるという話だ。

希ガスとは何であり、ウクライナはなぜこの分野で競争力が高く、ロシアの侵攻によって希ガスの不足が全世界の半導体市場にどのように影響を及ぼすのかを調べてみた。

ロシアがウクライナに軍事侵攻して10日目を迎えた2022年3月5日、ロシア軍は西部オデッサの手前まで進軍した。

ウクライナ南部オデッサに、ロシアの残酷な攻撃に苦しむウクライナ国民の泣き声(Crying)を連想させる「クライアンエンジニアリング(Cryoin Engineering)」という会社がある。

同社は半導体の製造に欠かせない希ガスであるネオン(Ne)やゼオン(Xe)、クリプトン(Kr)、ヘリウム(He)などを生産するウクライナ企業だ。

鳴き声(Crying)とは関係のない極低温技術を基盤にした希ガスメーカーで、クライオゼン(Cryogen:極低温体)と「in」を組み合わせたCryoin(クライオン)という名前で、現在140人ほどの社員が働く創業25年の会社だ。空気を零下240℃以下に冷却して液体空気を作り、そこで様々なガスを生産する。

2020年に韓国が輸入したネオンの約53%はウクライナからだが、その大半を同社が供給したという。2021年は中国に首位の座を明け渡したが、依然として韓国内で使用されるネオンの23%はウクライナが担っている。

オデッサがネオン生産の中心地域に成長した背景には、旧ソ連当時、西欧からのミサイル攻撃を防御するため同地域でレーザー兵器を研究開発したことがあるという説が一般的だ。

ウクライナで生産されたネオンのほとんどは、オデッサから黒海を通じて全世界に渡っている。一方、ミサイル防衛用レーザー兵器は、クライオンが生産するヘリウム・ネオン混合ガスをソースにしたエキシマレーザーではなく、さらに出力の強い二酸化炭素(CO2)パルスを利用したCO2レーザーが主に利用される。

◇旧ソ連の技術活用

クライオンはロシアの鉄鋼会社から買い入れた原油ガスを原料にし、旧ソ連時代から続けてきた極低温の空気分離技術を活用してネオンだけでなくゼノン、クリプトン、ヘリウムなどを生産している。

米ワイヤード(The Wired)によると、2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始した際、クリミア半島からのミサイル攻撃のためにクライオンはネオンガスなどの生産を一時中断したと伝えられている。現在、この会社のホームページやFacebook、Twitterなどのあらゆる活動が中断されている状態だ。ロシア軍の攻撃範囲が広がり、オデッサの陥落もそう遠くないという見方が出ている。

クライオンが生産する希ガスは、ロシアの鉄鋼会社の製鉄所から分離したガスを精製するのだが、その元は、地球全体に均等に広がっている空気だ。

空気は窒素分子(空気中の含有割合78.084%)と酸素分子(同20.946%)が大半(約99%)を占める。アルゴン(0.9340%)、二酸化炭素(0.0407%)、ネオン(0.001818%)、ヘリウム(0.000524%)、メタン(0.00018%)、クリプトン(0.000114%)、水素分子(0.000055%)、ゼノン(0.0000087%)は、ごく微量が存在する。このうち、不活性ガスであるアルゴン、ネオン、ヘリウム、クリプトン、キセノンなどを希ガスと呼ぶ。

この希ガスは、鉄鋼メーカーが製錬工程に必要な純粋な酸素と窒素を空気中から取り出した後、残る不純窒素から抽出する。

鉄鋼メーカーは製鉄所の溶鉱炉の温度を最大2300℃まで高めるため、純酸素を使用する。一方、1カ月半から2カ月に一度、溶鉱炉内の整備のため、内部に熱風を入れるのをしばらく止めるが、この休風時に溶鉱炉内の気圧が低下しないように窒素を使用する。このための純酸素と純窒素は、極低温空気分離装置(ASU)を通じて抽出する。

空気中から酸素と窒素を抽出するには、まず空気を高圧、低温で液化させることから始まる。臨界気圧である49.7気圧から空気を急冷し、-182.5℃で液体酸素を、-185.8℃で液体アルゴンを、-195.8℃で液体窒素を抽出する。沸点の差を利用することでASUの下層部には液体酸素が、上層部には液体窒素が集まる。ネオンとヘリウムの生産も沸点の違いを利用するのは同じだ。

(おわり)

「ロシアが韓国半導体を倒すか?」はMONEY TODAYのオ・ドンヒ記者が取材しました。

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