危険状況訓練、安全に実施
メタバース時代が現実に近づいている――韓国産業界でこうした受け止めが広がっています。特に、注目されているのは労働災害対策。現場を取材してみました。(シリーズ2/3)
「火災発生!火災発生!」
仮想の火災現場に、消防士が出動する姿が再現された。
「2022国際消防安全博覧会」において、「クロスリアリティー(XR)」=VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった技術の総称=コンテンツによって作り上げられた。
最大10人まで一緒に訓練できる仮想空間で、消防士が消火器などの装備を携え、指揮官の命令に従って一糸乱れず動き、火災を鎮圧する。
特に、実際の火災現場で不規則に発生する「バックドラフト(酸素が不足した空間に突然多量の酸素が供給され、燃焼ガスが瞬間的に発火する現象)」や「フラッシュオーバー(一定空間に蓄積された多量の可燃性ガスが発火点を超えてあっという間に火炎に包まれる現象)」など、命の危険がある特殊状況をXRで再現し、臨場感を最大限に高めた。
これはスコネックエンターテインメントの「XR消防訓練シミュレーション」と「対空間XRウオーキング」技術で、仮想の火災状況を作り上げたものだ。
このように、XR技術を活用した訓練プラットフォームは、物理的な限界から現実世界で経験できない危険状況を間接体験できるものとして、価値が高まっている。
情報技術(IT)業界関係者によると、スコネック、ハンビットソフトなどXR技術を保有した企業などが、先月8月31日~9月2日に大邱EXCOで開かれた「国際消防安全博覧会」に参加し、消防訓練プラットフォームとコンテンツを公開した。
◇スコネック、XRベースの消防訓練を提供…最大10人まで協力可能
スコネックは「2022国際消防安全博覧会」において、特殊な状況下における火災鎮圧能力を高めるために開発されたXR基盤消防教育・訓練プラットフォームとコンテンツ10種を披露した。
スコネックが公開した消防訓練プラットフォームとコンテンツは、消防士の意見を取り入れて開発され、実質的な消防能力の改善に役立つとみられる。このシミュレーターの特徴は、実際の火災現場と類似した環境で多様な教育・訓練が可能なことだ。
スコネックのXR消防訓練プラットフォームは▽個人別訓練用▽2人協力訓練用▽4人チーム別訓練用(指揮官訓練含む)▽10人用多人数協力火災鎮圧訓練用(指揮官訓練含む)――の計4つに区分される。
コンテンツは、訓練者参加者が希望する状況に合わせて選択できるよう▽室内・室外火災状況▽多人数協力火災状況▽消火器などの操作――を盛り込んだ。特に、臨場感を最大限に高めるXR環境だけでなく、訓練終了後の水使用量、火点命中率など訓練結果を分析して提供することで、訓練効果も倍加させた。
スコネックは、現実では予測しにくい多様な火災状況を再現し、訓練参加者が実際の状況で活用できるようにすることに重点を置いた。実際、火災鎮圧が多数の消防士の協力で進められるため、10人が同時に訓練できるスコネックのXR消防訓練プラットフォームは、高い効果が期待される。
スコネックのファン・デシル代表は「XR教育・訓練コンテンツの究極的な目的は、物理的な限界から現実には経験できないような危険な状況を、仮想世界を通じて体験できるようにすること。メタバース技術が生活の分野にとどまらず、産業と災害現場で影響力を発揮できるよう、コンテンツの実感度と技術力をより一層高度化していく」と述べた。
◇ハンビットソフト、半径3メートルの空間さえあれば消防訓練が可能
ハンビットソフトは、拡張現実装備である「ホロレンズ」を通じ、消防訓練ができるコンテンツを披露した。半径3メートル程度の空間さえ確保できれば、いつでもどこでも反復訓練ができるようにした。
訓練参加者はガイドメッセージに従って目標位置を眺めたり指定されたスポットに移動したりし、仮想操作を通じて装備を使用して実際の火災のように対応できる。この過程で、装備使用時の注意事項と主要作動原理などが視覚的なメッセージとして見ることができ、訓練効果を高める。
ハンビットソフトは、科学技術情報通信部と情報通信産業振興院、韓国産業技術評価管理院が2023年まで推進する「XRフラッグシッププロジェクト」の消防分野に産学コンソーシアムとして参加している。昨年12月に初年度の成果を公開したのに続き、今回の博覧会で2年度の成果を披露した。
メタバース消防訓練の結果と参加者の反応などは、体系的なデータで管理される。ハンビットソフトは実際、大型火災事例を基盤としたXR教育・訓練および評価システム、火災対応資格、教育、評価プラットフォームも開発しており、3年度には韓国消防安全院の支部で、消防安全管理者を対象にした実証を計画している。
ハンビットソフトストロベリープラットフォームのク・ミンジェチーム長は「メタバース消防訓練は費用を最小化できるだけでなく、時間と場所の制約なしに反復的な訓練が可能になる点が長所だ。韓国の消防安全水準をさらに一段階引き上げるための新しいメタバース訓練プラットフォームを作るのに寄与するだろう」と強調した。
(つづく)
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