2024 年 7月 27日 (土)
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[KWレポート] オーシャンテック2022 (2)

韓国レジャーボート産業、微々たる市場支配力

ブランズウィック社の沿革(ブランズウィック社のホームページに掲載)

4次産業革命に合わせ、主要先進国は既に海洋でも新たな技術の開発に乗り出しています。「2022オーシャンテックコリア」(今月9日開催)に合わせ、韓国の政策と世界の主要技術の流れを調べてみました。(シリーズ2/6)

◇ボウリング界を制覇

世界レジャーボート産業をリードする企業としては、米国レジャー産業とともに成長してきた、177年の歴史を持つブランズウィック(Brunswick)が挙げられる。ブランズウィックは現在、レジャーボート産業をリードする一方、1990年代にはボウリング界を制覇した企業だ。

スイスから米国に移住したジョン・モーゼ・ブランズウィック(John Moses Brunswick)は1945年、オハイオ州シンシナティに定着し、ビリヤード台の製造業を始めた。これが現在のブランズウィック社の母体となる。木材を利用したビリヤード台の製作を中心に会社の規模を拡大していたブランズウィック社は、室内ボウリング場の増加で人気が高まっていたボーリング業界に進出し、事業領域を拡張した。

海洋レジャー産業への進出は1960年、オーウェンヨット(Owen Yachts)とラーソンボート(Larson Boat Works)を買収して始まった。1961年にはマーキュリー・マリン(Mercury Marine)とクイックシルバー(Quick silver)の前身であるキックハーパー(Kiek haefer Corporation)を買収し、レジャーボート業界でトップの座を築いた。

しかし、1990年代の世界的な景気低迷で経営危機に見舞われ、海洋レジャー分野に集中するため、企業の中心的分野とは関連性の低い防衛産業とバルブ製造業分野を整理し、2015年には成長の原動力となったボウリング分野も売却した。2020年末には海洋レジャー観光産業の未来を見越して、共有経済とIT、レジャーボート利用者の世代交代などに対応した戦略に重点を置いた。

その結果、2021年には自動(Autonomy)、連結(Connectivity)、電動化(Electrification)、共有(Shared Access)戦略を盛り込んだACES計画を策定し、大学や関連研究機関と協力して自動運転船舶、モバイルボート管理プラットフォーム、電気ボート用の高容量リチウムイオンバッテリーなどを開発しており、ボート共有サービス提供のためのインフラを拡大している。

こうした努力の一環として、レジャーボートメーカーであるにもかかわらず、2020年には世界最大のICT製品展示会であるCES(Consumer Electronics Show)に参加し、海洋レジャー産業の未来を見据えて、ITを使ったレジャー船舶を発表した。

同時にブランズウィック社が重視している分野は、ボート共有サービス提供だ。このために2019年、「Freedom Boat Club(FBC)」を買収した。FBCはボート運航技術がなくても21歳以上の成人なら誰でも会員になれ、会員権を購入すればクラブ会員が共有するさまざまなボートを自由に利用できる。

買収当時、FBCは170のクラブを保有していたが、現在、米国、カナダ、欧州に360のクラブと約4000隻のボートを保有しており、会員数は6万7000人に達する。特に、会員のうち女性の割合が35%だ。レジャーボートの所有者がほとんど男性であるのに比べ、共有ボートサービス市場は女性の割合が高く、今後レジャーボート市場の成長可能性を示す指標と見ることができる。

ブランズウィック社は、FBCを通じてボート共有サービスだけでなく、レジャーボートの操縦や水上レジャー安全教育プログラムを組んで、親水文化拡散に寄与し、現在開発中の電気ボートを広めるための拠点施設として活用しながら、環境的持続可能性実現と新技術開発を推進していく。

2021年末現在、ブランズウィック社は29カ国で支社と工場を運営しており、1万8500人の職員が勤めている。2021年の売上高は58億4600万ドルを記録、新型コロナにもかかわらず2020年(43億4800万ドル)比で34.5%成長した。

ブランズウィック社のFreedom Boat Club(ライトハウスハーバーマリーナのホームページでキャプチャー)©news1

◇「親水文化の普及・関連サービス業の育成」

韓国国内の造船産業が世界的に高い競争力を確保したのに対し、国内レジャーボート産業は国際的競争力を判断することができないほど市場支配力は極めて微々たるものだ。

国内に登録された動力水上レジャーボートは2016年の1万9000隻から2020年には3万3000隻に増加したが、大部分が欧州や米国から輸入したり、日本の中古レジャーボートを輸入したりしたものだ。レジャーボートの船外機エンジンも100%輸入に依存しており、短期間で国内レジャーボート産業の構造を変化させるには技術力や価格競争力の面で限界がある。

また、米国や欧州とは異なり、レジャーボート市場の活性化と直結する親水文化の裾野も広くない。ただし「ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権110大国政課題」はレジャーボート産業と関連してマリーナ拠点やレジャー船舶クラスター造成などに言及しており、国内レジャーボート産業の跳躍に肯定的な影響を及ぼすものと期待される。

このような状況について専門家たちは、海外のリーディングカンパニーの事例を基に、国内レジャーボート産業の成長のための戦略を打ち出すべきだと助言している。

韓国海洋水産開発院経済戦略研究本部のホン・ジャンウォン研究委員は、まず「レジャーボート利用を活性化できる親水文化の普及と関連サービス業の育成が必要だ」と強調したうえ、次のように忠告した。

「これまで、国内でレジャーボートを購入したりレジャーボート活動を楽しむことは贅沢だという偏見が強かったが、最近はレジャーボート活動が次第に大衆化している。米国と欧州の共有経済トレンドを反映して国内レジャーボートメーカーも遊覧船の製作やB2B方式の販売から脱却し、製造と販売、技術開発、サービス商品開発が有機的に連携されるシステムを構築しなければならない」

今年3月、京畿道高陽市一山キンテックスで開催された海洋レジャー産業展示会「2022京畿国際ボートショー(KIBS)」©news1

また、韓国内外の市場環境を分析し、国内海洋レジャー市場環境を念頭に中長期的観点でレジャーボート育成戦略が樹立なされなければならないと指摘する。「レジャー船舶クラスターを造成しようとする国政課題と連係しながら、国内レジャーボート産業の技術競争力を評価し、レジャー船舶船体、部品、デザイン、外装、エンジンなど発展可能な分野に対する選択と集中が必要だ」

さらに、レジャーボート教育と免許、専門人材養成、安全管理など公共分野で、韓国で製作したレジャーボートを優先的に購入したり利用したりする制度の準備も必要だとも強調する。「レジャーボートを活用したサービス業の創業促進を通じてレジャーボート販売や管理市場を育成するために、制度的支援とレジャーボートの停泊と管理のための施設確保が必要だ」

(つづく)

©news1

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