10分で食べ終わるケーキ、作るのに3日
韓国の飲食店につけられるレビューに疑問の声が上がっています。「腐った味がする」「テーブルがベタベタしてる」などの文章とともに、「星1つ(★)」という評価を突きつけられ、戸惑う店主が少なくありません。こうした「★」評価は妥当なものなのか――記者が自ら出向き、確かめてみました。(最終回)
◇少しだけ悩んで、ゆっくり、慎重に
星やレビューをすべてなくす。そして、すべてを「リピーター率」というものに置き換えるのがどうか、という案がある。
もちろん、このやり方であれば、良ければ自ずともう一度利用するだろう。だが、消費者目線でのより詳細なレビューを見ることができなくなる。
また「レビューや星がなかったころでも、ダメな店は自然と消えたではないか。すべてをなくす」という主張にも説得力がある。もっとも、戻ることは容易ではない。したがって、やるべきことは、よりよい方法を探し出すことだ。
最後に、記したいことがある。記者が訪問し、長時間滞在してしっかり向き合ってわかったことだ。
――Dカフェの店主。メニューの前で何かに没頭していた。
何をそんなに熱心にしているのか見ると、お客さんが目にするメニューがわずかに傾いており(ほとんど目立たないものだが)、それを真っ直ぐに貼り直していたのだ。
飲み水は少しでも減れば、また満たして起き、クッキーもきれいに見えるよう、あちこち向きを変えた。こちらがしっかりと確認しなければ、気づかないことばかりだった。
――C中華料理店の店主。店名には「花と庭園」という意味が込められていた。祖父の代から中華料理店をはじめ、この店主もいつの間にか職歴が27年になったという。レジを打つ店主の後ろには、祖父と父、彼と家族の白黒写真が並んで貼られていた。この店はほかならぬ、彼の歴史だった。
――Bカフェの店主。偶然焼き菓子デザートの作り方を聞くことができた。
小麦粉にバターと水を加え、こねて冷蔵庫で1日寝かせる。翌日、それを機械ですっと薄くのばしてから、また折ってのばし、冷蔵庫に置いて、さらにもう一度折ってのばして――を5回繰り返し、冷凍庫に入れる。翌日、カットしてオーブンで50~60分焼き、冷めたらクリームを入れて完成だという。
10分で食べ終わった焼き菓子のデザートが、誰かの手によって3日間もかけて作られたものであるとは見当もつかなかった。
だから、どうか、もう少し悩んで、落ち着いて考え、そのうえで、慎重にレビューを残したらどうだろうか。こだわりの職人によって、いつも心が込められた商品が出されている、そんなかけがえのない店かもしれないからだ。
◇エピローグ
Aカフェの店主に尋ねた。良いレビューの中で覚えているものはなかったか、と。店主は悩み、ぎこちなく笑った。「悪いコメントは長く残るが、良いものはむしろよく思い出せない」そうだ。
そうこうしているうち、店主が「思い出した」と言って、あるレビューを見せてくれた。
「材料について悩み続け、試行錯誤を繰り返して作ったと感じさせるデザートです。食にうるさく、飽き性ですが、全部食べるのがもったいないくらい、おいしかったです。なぜ今まで、この店のことを知らなかったのでしょうか……」
気になって尋ねた。数多くのコメントのなかで、なぜこれが「良い」と感じられたのか。
店主は間髪入れず、「『材料について悩み続け、試行錯誤を繰り返して作った、と感じさせる』という部分です」と答えた。
「作る時、本当に材料について悩み続けるのです。どうやってこの味を出そうかと……。それをお客さんがわかってくださったということです。本当にありがたかったです」
(おわり)
「『星1つ』は本当にまずいのか…食べて確かめた」はMONEYTODAYのナム・ヒョンド記者が取材しました。
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