2024 年 7月 27日 (土)
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IT・ゲーム業界では「包括制が通常」 [KWレポート] サービス残業の世界 (4)

包括賃金制の問題点について意見を述べる市民ら(c)news1

これまでの判例を土台に判断すれば「労働時間算定が不可能な場合」と「使用者と労働者が明示的に合意した場合」にのみ包括賃金制が可能だ。

問題は、このような判例にもかかわらず、労働時間算定が難しくない事務職とサービス業などでも包括賃金制が依然、慣行になっているという点だ。特にクランチモード(超強硬勤務体制)として過労死騒ぎになったIT・ゲーム業界では、包括賃金制が通常だ。包括賃金制を適用できる業務や労働時間形態がどんなものなのか、基準が明確に定義されていないためだ。

◇「夕方のある暮らし」どころか…

韓国の労働組合の全国組織「民主労働組合総連盟」(民主労総)全国化学繊維食品産業労働組合首都圏支部IT委員会は先月1カ月間、IT・ゲーム会社111カ所の実態を調査した。その結果、84カ所(76%)が包括賃金制を採用していることが確認された。雇用労働省の「2020包括賃金制実態調査」によると、2019年の包括賃金制適用会社は調査対象2522カ所中749カ所(29.7%)だった。事業所規模別では、従業員数100人以上300人未満の事業所の30.3%が包括賃金制を導入していた。

「午前9時30分出勤、午後6時30分退勤を条件に労働契約書を交わした。なのに午前0時までの夜勤は基本。仕事が集中する時は翌朝4時まで働く。深夜に退勤しても翌日午前11時までには出勤するよう求められる。『夕方のある暮らし』どころか、超過勤務手当もない『サービス残業の暮らし』だ」

ソウルのある中小ゲーム会社のチーム長級社員(32)はこう嘆く。

◇非正規職で蔓延

包括賃金制は、大企業より相対的に勤務環境が厳しい中小企業や非正規職で蔓延しているという点で、さらに深刻だ。

「時給1万ウォン(約1000円)時代」に突き進む中で、最低賃金の引き上げと週52時間労働制の余波で、人件費などの負担が重い中小企業の立場では、包括賃金制という「迂回(うかい)路」を放棄するのは容易ではない。一方、雇用不安に苦しめられる非正規職は、超過勤務手当を受け取る制度があった場合でも、1~2時間の超過勤務をきちんと精算するのでさえ、上司の顔色をうかがわなければならない。

首都圏の部品製造会社で働く非正規職(33)は「再契約を目前にして、超過勤務手当について会社を問いただすことができるだろうか。われわれは、会社に言われれば、その通りにやるしかない立場だ」と声を潜める。国会において法で基準を定めるべきだという主張が出ているのも、こうした現実のためだ。

働いた分だけ賃金を支給するという原則のもと、労働契約で賃金の構成項目、計算方法、支給方法を明示して超過勤務手当を支給する――法の趣旨はこうなっている。「包括賃金制はこれをないがしろにするものだ。労働基準法で基準を作るべきだというのが学界の大勢だ」。漢陽大学法学専門大学のカン・ソンテ院長はこう強調する。

成均館大法学専門大学院のキム・ホンヨン教授は「包括賃金制は判例法理で体系化された経緯があり、解釈論で制度を改善するには限界がある。究極的には立法での解決が必要だ」と指摘する。

(つづく)

(c)MONEYTODAY

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