
グーグルが韓国の高精度地図データを海外に持ち出すことを求めている問題で、韓国政府は審議を来年に持ち越した。これは国の安全保障情報の集積を海外に引き渡すに等しく、国民の税金で構築された空間データの主権をも委ねることになるという懸念が依然として強いためだ。
与野党の政治家、学界、産業界はこれまで、安全保障上の理由から地図の国外搬出に反対する立場を一致して示してきた。韓国政府は、グーグルが約束した「機密情報のぼかし処理」や「座標制限」を盛り込んだ補完申請書を2026年2月5日までに提出させ、それをもとに審査を進める。今回の判断は、2025年5月と8月に続いて3度目の保留となる。
韓国国土交通省傘下の国土地理情報院は11月11日、国防省など関係省庁と「測量成果海外搬出協議体」を開き、グーグルの1:5000縮尺の高精度地図の国外搬出申請について、補完申請書を受け取った後に審査を進めると決定した。今回保留に至った理由は、グーグルが口頭では受け入れを表明した機密処理措置や座標制限などの内容が、正式な書類に反映されていなかったためだ。
高精度地図は、道路幅・建物の輪郭・標高・地形など、韓国国内の空間情報を詳細に表現しており、軍事基地や重要インフラの位置を把握する「デジタル作戦地図」として悪用されかねない。また、こうした情報が米国の法律のもとに置かれることで、韓国の意志と関係なく外交・軍事に利用されるおそれもある。
IT業界では、地図データの海外流出が韓国内の地図サービス企業や空間産業の衰退を招くと懸念している。グーグルは、韓国で収集した検索データ、消費パターン、位置情報などをもとにアルゴリズムや商品開発に活用し、グローバル市場での優位性を強めている一方、データセンターは海外に置き、法人税などの責任を回避している。
韓国政府は過去25年間にわたり、1兆ウォン(約1100億円)以上の予算を投じて高精度地図を構築してきた。グーグルの韓国内推定売り上げは11兆ウォンを超えるとされ、ネイバー(10兆7377億ウォン)を上回るが、法人税はネイバーの3900億ウォンに対しわずか200億ウォン程度にとどまっている。
高精度地図は、自動運転などの次世代モビリティ分野でも重要なインフラだ。韓国の中小企業は、ネイバーやカカオなどのプラットフォーム企業に対価を払って地図サービスを利用している一方、グーグルは韓国の空間データを無償に近い形で活用し、ウェイモなど自社の自動運転企業に役立てることができる構図になっている。
グーグルは「国内パートナー企業から、政府の承認を得たぼかし処理済み画像を購入・使用する案も検討中」と表明しているが、韓国にデータセンターを設置する考えは依然として示していない。9月の記者会見でグーグルコリアのユ・ヨンソク広報責任者は「特定地域にデータセンターを設置するには多くの要素を考慮しなければならない」と述べ、技術的な制約から韓国内に設置しても、結局海外で処理すると主張している。
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