
世界各国が人工知能(AI)を巡る主導権争いを繰り広げる中、韓国では大統領直属の「国家AI委員会」が設置されているにもかかわらず、実効性に乏しく、存在意義を問われている。AI技術における“ゴールデンタイム”を逃さぬためには、タスクフォース(TF)を立ち上げてでも組織再編が急がれる。
国家AI委員会は、ユン・ソンニョル(尹錫悦)前政権下の昨年発足し、「AI三大強国」を目指すとされた。しかしユン氏の罷免以降、委員会は事実上機能不全に陥り、各省庁の報告を受けるだけの“名ばかり機関”へと転落した。
イ・ジェミョン(李在明)大統領はこれを打開すべく、国家AI委員会の権限強化を掲げ、大統領室に「AI政策首席」を新設する構想を明らかにした。このAI政策首席は、いわば国家最高AI責任者(CAIO)としての役割を果たすことになる。大統領自身がAI戦略に深く関与する姿勢を示している。
問題はその「構成」にある。
現在の委員会は依然として官僚主導の体制であり、学界と行政が主導し、民間専門家は名ばかりの存在に過ぎない。産業界や技術現場の声が反映されにくい構造では、実効性ある戦略は生まれ得ない。今後は「民間が戦略を設計し、政府はそれを支える」という枠組みへの転換が必要だ。
新設されるAI政策首席も同様に、現場を最も理解している民間の技術者が起用されるべきだ。政治家や官僚を充ててしまえば、前政権の委員会と何ら変わるところはない。実際にAIを開発・運用し、現場での課題を肌で感じてきた人物が求められている。
今後のAI委員会は、会議を主宰するだけの存在ではなく、政策の企画と実行を担う実働機関へと再編されねばならない。そのためには、予算配分や規制緩和において主導的役割を担える強力な権限が不可欠だ。
今から30年前、韓国は全国に超高速インターネット網を敷設し、情報通信省(現・科学技術情報通信省)を創設することでIT強国へと成長した。当時の集中力と一貫性が、今まさに再び求められている。
タイミングを逃せば、韓国はAI技術を“開発する国”ではなく、“輸入する国”として取り残されることになる。国家の戦略的選択が問われる分岐点にあるのだ。【news1 ソン・オムジ記者】
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