29歳の全身麻痺のチェコ人画家ベロニカは、片道3時間かかる道のりを毎週往復してプラハに通っていた。理由は、世宗(セジョン)学堂で韓国語を学ぶためだった。体が不自由なため、口や足で絵を描く彼女だが、韓国語の翻訳家になりたいという思いで、その遠い道を通学していたのだという。
ベロニカの情熱は、韓国語を母国語とする私たちを感嘆させる。しかし、同時に新たな課題も投げかけている。世界中のさまざまな困難な環境に置かれながらも韓国語を学びたいと思っている他の「ベロニカ」たちが、もっと簡単かつ便利に韓国語を学べる方法はないのだろうか?
外国人に韓国語を教え、韓国文化を広める役割を担う世宗学堂が初めて設立されたのは2007年だった。モンゴルのウランバートルなど3カ国13カ所で始まった世宗学堂は、この14年間で88カ国256カ所に拡大し、100万人以上の学習者を輩出してきた。さらに、韓流の拡大に後押しされ、毎年1万5000人の待機者が列を作るほど、潜在的な学習者が急増している。
まさに世界的な韓国語学習ブームといえるだろう。
そのため、世宗学堂の拡大を進めてきたにもかかわらず、すべての潜在的な学習者を受け入れることができていないのが現状だ。
これを受け、文化体育観光省は先月、世宗学堂の革新策を発表し、「AI(人工知能)韓国語教師」を解決策として提示した。巨大言語モデル(LLM)を基盤とした生成型AI技術を活用し、いつでもどこでも簡単にアクセスでき、カスタマイズされた学習が可能な「i-世宗学堂」を構築しようというものだ。
世宗学堂に非対面型の教育課程がなかったわけではない。しかし、これまではオフライン授業の内容をオンラインプラットフォームに移しただけで、デジタル技術を十分に活用していなかった。
しかし、新たな学習プラットフォームであるi-世宗学堂では、いつでもどこでもオフラインの世宗学堂と同じレベルで非対面学習が可能になる。
さらに、AI韓国語教師を活用することで、個人のレベルや文化的環境に応じたカスタマイズ学習ができる。AI教師は、学習者のレベルや進度に合わせた学習計画や資料を提供し、学習者の強みと弱点を分析して、最適な学習コンテンツを推薦してくれる。また、文法、発音、作文などに関するリアルタイムのフィードバックを提供し、即座に誤りを修正しながら学習を進められるようサポートする。
加えて、i-世宗学堂では、学習者の実力を診断し、難易度の自動調整や採点が可能な画期的な評価システム「世宗韓国語評価(iSKA)」を導入する。これにより、個々に最適化された教育課程を受講し、進度管理が可能となる。
i-世宗学堂の構築が完了する2026年ころには、遠い場所まで通わなくても、いつでもどこでも韓国語を学び、自分の夢に近づくことができるようになる。世界の学習者が世宗学堂に足を運ばなくても、簡単なモバイルアプリを利用して韓国語で自由に読み書きし、会話ができるようになるのだ。【韓国文化体育観光省 ヨン・ホソン第1次官】
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