
北朝鮮が最近、「血管疾患の治療に高い効果がある」として新たに導入した「注射用アスピリン」を積極的に宣伝している。しかし、これは韓国など先進医療環境ではすでに副作用の危険性から使用されなくなった治療法であり、医療資源不足を背景にした“代用品”として開発された可能性が指摘されている。
北朝鮮は先月閉幕した「春季国際商品展示会」で、国内で開発された「効能の高い薬物・注射用アスピリン」を紹介した。製品説明書では「老化に伴う血管疾患の原因は、血栓物質(フィブリン、コレステロール、中性脂肪)とカルシウムの複合作用による」とし、同薬は「カルシウムを溶解する初の薬剤」と強調している。
また、注射後すぐに発熱・鎮痛・抗炎症・リウマチ治療などの効果が現れ、血栓およびカルシウムの溶解作用も得られると説明されている。
一方、韓国を含む標準的な医療現場では、急性心筋梗塞に対しては血管造影術(PCI)による治療が基本であり、その前処置としてアスピリン(経口)やヘパリン(静脈注射)などの抗血小板薬・抗凝固薬を併用する。
これに対して北朝鮮は、経口アスピリンの代わりに注射剤として開発・使用しており、これは韓国ではすでに安全性上の理由から使用されていない方法であることが分かった。
北朝鮮で医師として働いた後に脱北し、現在は韓国・翰林大学江南聖心病院で勤務するノ・ヨンギュン医師は「韓国ではアスピリンは経口投与が原則。注射剤は効果は速いが、消化管出血、血小板減少、アレルギー反応といった深刻な副作用があるため使用されない。北朝鮮では抗血小板薬や抗凝固薬の安定供給が困難なため、即効性を求めてアスピリンの注射剤を開発したものと見られる」と分析している。
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