「安物」と無視していたチャイナ化粧品、いまや大勢
世界最大の化粧品激戦地・中国。これまで優勢だった韓国産を、急成長する中国産が脅かしています。「韓流禁止令」や新型コロナウイルスの感染拡大、共同富裕――激変する中国市場で、「K-ビューティー」はどう「C-ビューティー」と競い合うべきか、その生き残り戦略を検証しました。(シリーズ1/6)
◇「K-ビューティーは良い」は昔
中国の習近平国家主席の妻、彭麗媛氏は化粧品「百雀羚(Pechoin)」を使っている。中国ではほかにも、設立4年でナスダックに上場した「完美日記(Perfect Diary)」▽中国版“エチュードハウス(ETUDE HOUSE)”と目される「ジュディドール(Judydoll)」▽“中国の資生堂”こと「自然堂(Chando)」――などが急成長している。
原料も成分も不明瞭――として、韓国が軽視してきた中国の化粧品ブランド(C-ビューティーブランド)が今、2016年の韓流禁止令以後の「国貨」(中国産)の熱風に支えられ、愛国心で武装した中国のZ世代を捕らえて、年100%という恐ろしい成長率を誇っている。世界最大の化粧品激戦地・中国で巻き起こったC-ビューティー旋風が、K-ビューティーを脅かしているのだ。
中国ビューティー市場を8年にわたり分析してきた「ドッツクリエイティブ(DOT Screative)」のチョン・デヒョン代表は次のように分析する。
「2016年以降に登場したジュディドールや完美日記などの新生中国ブランドが、中・低価格市場でコスパとアイデアを前面に出して成長し、K-ビューティーブランドに置き換わり始めた。その後も『至本(CHERMORE)』『花西子』など新ブランドが淘宝(タオバオ)ライブ放送などを足掛かりに成長し、中国のZ世代をとらえた」
C-ビューティーの攻勢により、中低価帯のK-ビューティーブランドショップは、中国内で存在感が薄れている。「アモーレパシフィック」のエチュードハウスは2021年3月、中国でのすべてのオフライン店舗を閉鎖すると発表した。「これはK-ビューティーが中国での存在感を失っている証拠」(チョン代表)だという。
◇最近5年間の中国化粧品ブーム
中国の化粧品市場は、全世界の13%を占め、米国(18%)に次いで世界2位だ。しかし、1人当たりの化粧品支出額は年50ドルほどで、米国(年282ドル)に比べて低い。つまり潜在的な成長力が非常に大きいということになる。
中国市場はフランスの「ロレアル(LOREAL)」など外国勢が掌握してきた。だが、ここ数年、中国のローカルブランドがシェア拡大に挑み、スキンケア分野で百雀羚、自然堂などが、ポイントメイク分野では完美日記が、それぞれ「天猫(Tmall)」などネットショップ上で急成長している。
国際的な市場調査会社「ユーロモニター」によると、2020年の中国基礎化粧品市場シェア上位10ブランドの中に、K-ビューティーは一つも含まれていない。上位10位内にはロレアルや「エスティローダー(ESTEE LAUDER)」などグローバルブランドが8つ、Cビューティーブランドの百雀羚と自然堂がそれぞれ4位、6位に名を連ねた。K-ビューティーブランドは「LG生活健康」が14位、「イニスフリー(Innisfree)」が17位で、いずれも10位圏外だ。
百雀羚と自然堂、完美日記は、いずれも韓国では認知度が低いブランドだが、この5年で中国に化粧品ブームを起こし、急速に成長した。2016年以前までは、中国でも「メイド・イン・チャイナは信じられない」という認識が根強く広がっていたが、韓流禁止令以降、K-ビューティーと韓流が影響力を瞬く間に失い、中国で「国貨」の熱風が巻き起こると状況は180度変わった。
(つづく)