2025 年 5月 17日 (土)
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韓国の研究機関、コウモリでウイルス実験モデルを構築…コロナなどに「先制対応」

IBSが構築した多種・多組織のコウモリオルガノイドプラットフォームの説明図=IBSなど(c)KOREA WAVE

動物由来のウイルスを、動物の臓器で防ぐ──韓国の研究チームがウイルス感染の特性や免疫反応を分析できる実験用プラットフォームを開発した。これにより、新型・変異ウイルスや、将来のパンデミックに先手を打って対応することが可能となりそうだ。

科学技術情報通信省は16日、基礎科学研究院(IBS)の韓国ウイルス基礎研究所とゲノム編集研究団が、韓国に生息するコウモリ由来の臓器オルガノイド(organoid)を構築したと発表した。研究成果は、国際学術誌「サイエンス」の5月16日号に掲載された。

オルガノイドとは、成体および胚性幹細胞を実験室環境で分化させて作る三次元の臓器類似体。「類似臓器」とも呼ばれ、損傷した臓器の治療や動物実験モデルの代替として用いられる。

今回構築されたコウモリは、SARS-CoV-2、MERS-CoV、エボラ、ニパウイルスなどの高リスクな人獣共通ウイルスの自然宿主として知られている。コウモリ由来の新型・変異ウイルスが、高リスクの感染症やパンデミックを引き起こす潜在的な脅威とされる理由だ。

IBSの研究チームは、韓国をはじめ北東アジアやヨーロッパに広く生息する食虫性のヒナコウモリ科(Vespertilionidae)とキクガシラコウモリ科(Rhinolophidae)の5種のコウモリから、気道、肺、腎臓、小腸など複数の組織のオルガノイド生体モデルを構築した。

研究チームは、この新たに構築したコウモリオルガノイドを用いて、SARS-CoV-2やMERS-CoV、インフルエンザ、ハンタウイルスなど、コウモリ由来の人獣共通ウイルスに特有の感染様式や増殖特性を明らかにした。また、先天的な免疫反応も定量的に確認した。

研究チームは「これは、ウイルスと免疫の相互作用を解明するための重要な研究プラットフォームとしてマウスのオルガノイドが活用できるということだ。野生コウモリの糞サンプルから2種類の変異ウイルスを発見し、それを培養・分離することにも成功した」と明かした。

研究チームは、従来の三次元コウモリオルガノイドを二次元培養方式に改良し、高速な抗ウイルス薬スクリーニングに適した実験プラットフォームへと拡張した。

三次元オルガノイドは形状や大きさが不均一であるため自動化実験が難しく、分析や評価にも時間がかかる。だが研究チームが開発した二次元プラットフォームでは、オルガノイド由来の細胞を平坦な培養プレートに広げて均一な細胞層を形成することで、実験が容易で分析も迅速だ。

研究チームはこのプラットフォームを活用し、分離したコウモリ由来の変異ウイルスに対してレムデシビル(Remdesivir)などの抗ウイルス薬の効果を定量的に分析した結果、従来の細胞株システムよりも感染抑制効果をより敏感かつ正確に反映することが確認された。

研究を主導したキム・ヒョンジュン主任研究員は「コウモリオルガノイドが新型・変異ウイルスの感染性評価と治療薬選別の両方に活用可能な生理学的モデルとして機能することを実証した。今回のプラットフォームによって、これまで細胞株ベースのモデルでは難しかったウイルスの分離、感染分析、薬物反応評価を一括して実施できるようになった」と語った。

(c)KOREA WAVE

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