
少子高齢化により労働力が急速に減少し、韓国経済の基盤が揺らいでいる。生産の柱である労働人口が減れば、経済成長の鈍化は避けられない。定年延長や退職後の継続雇用といった政策的な解決策は提示されているものの、利害対立により議論は空転を繰り返している。その間にも高齢層の収入空白は広がり、不安の声が強まっている。
統計庁の将来人口推計によれば、生産年齢人口(15~64歳)は2019年の3763万人をピークに急減し、2025年には3591万人と6年で172万人も減少した。生産年齢人口は2030年に3417万人、2040年には2903万人、2050年には2445万人へと大幅な減少が続く見通しだ。
このような労働力減少は、韓国経済の「実力低下」に直結する。韓国開発研究院(KDI)は、2025年の潜在成長率を1%台後半と見込み、2030年代には1%台前半まで落ち込むと予測している。2040年代後半にはマイナス成長の可能性も示唆されている。
高齢層の就労支援策として、政府の経済社会労働委員会は、60歳定年後の「継続雇用義務化制度」の段階的導入を提案。2027年まで猶予期間を設け、2028~2029年に62歳、2030~2031年に63歳、2032年に64歳、2033年に65歳と引き上げていく案だ。
しかし、労働界は一律の定年延長に反発し、経済界は再雇用を主張しており、双方とも合意には至っていない。次期政権でもこの継続雇用問題は重要課題となる見通しだ。
最大の障害は「年功序列型賃金体系」にある。勤続年数に応じた賃金上昇により、高齢者を雇い続けることが企業にとって重荷となっている。さらに、時間に縛られた現行の労働時間制度も柔軟性を欠き、高齢者雇用の妨げとなっている。
また、若者の雇用と高齢者の雇用が衝突する場面も増えている。定年延長で高齢者の雇用が1人増えると、若年層の雇用が0.24人分減るという研究結果もある。賃金、労働時間、若年層雇用の問題は、社会全体で合意形成を目指すべき課題であり、次期政権でも「社会的対話」が鍵となる。
なお、定年は満60歳であるのに対し、2025年時点の国民年金の受給開始年齢は満63歳と、3年の収入空白が生じている。MONEYTODAYが韓国ギャラップに委託して実施した調査によれば、満30~59歳の正規雇用労働者1009人のうち、退職後の収入空白を懸念すると答えた割合は89%に達した。【MONEYTODAY ハ・スミン記者】
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