
韓国大統領選を前に、北朝鮮の態度が様変わりしている。2017年の選挙では「保守政権の再登板阻止」を掲げて激しい対南政治宣伝を展開したが、今回は韓国大統領選について一切触れず、“沈黙の戦略”を取っている。
国営朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙・労働新聞では14日現在、韓国大統領選に関する報道は一件も見られない。統一省関係者も13日、「北朝鮮から大統領選に関する特異な動きや言及は確認されていない」と記者団に明らかにした。
これは2017年、大統領だったパク・クネ(朴槿恵)氏の弾劾によって5月に繰り上げ選挙が実施された当時とは対照的だ。当時、北朝鮮は韓国保守陣営を「反民族的な傀儡」と攻撃し、「保守派の政権復帰は絶対に阻止すべきだ」とする強烈な政治的メッセージを発信していた。
さらに2022年の大統領選の際も、与野党を問わず候補者の対北朝鮮政策に対して強い批判を繰り広げていた。
このように、北朝鮮はこれまで韓国の政権交代のタイミングで対南世論工作を試みるのが通例だった。特定候補に有利・不利な影響を及ぼす意図も指摘されてきた。
しかし最近はこうした戦略に根本的な変化が見られる。象徴的なのが「非常戒厳」宣布や弾劾局面においても、北朝鮮がこれを冷淡に報じただけで一切の論評や評価を避けた点だ。これは、パク・クネ氏の弾劾当時に、北朝鮮が迅速かつ具体的に報道し、国内体制強化に利用した姿勢とは明確に異なる。
この変化は、北朝鮮が南北関係を「敵対的二国家関係」と規定し、韓国を対象とする「無関心政策」を貫いているためと見られる。2023年末、北朝鮮は「南北はそれぞれ別に生きる」と宣言し、その後、南北連絡チャンネルや対南宣伝媒体の多くを停止・廃棄するなど、徹底した関係遮断に出ている。
また、最近の北朝鮮はロシアとの軍事的協力関係を強化しており、経済的見返りも得ている状況だ。こうした中で、韓国との関係改善やそれに伴う米朝対話の可能性にも期待していないことから、韓国政治に対して無関心を装っているとする見方もある。
今後も北朝鮮は、韓国の選挙局面に対して過去のような干渉を控え、「敵国としての距離感」を維持する可能性が高いと専門家らは分析している。
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