
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の娘が、母親のリ・ソルジュ(李雪主)氏に代わり「ファーストレディ」としての役割を担い始めているとの分析が浮上している。登場初期とは異なり、最近では積極的にキム総書記を補佐し、民衆に接する姿も演出しているためだ。
朝鮮労働党機関紙・労働新聞や国営朝鮮中央テレビなどは26日、娘がキム総書記とともに海軍の新型5000トン級駆逐艦「崔賢号」の進水記念式に出席した様子を報道した。
半束ねのヘアスタイルに白いジャケットと黒のスラックスという端正な服装で父親のそばに立つ娘の姿は、リ・ソルジュ氏が公式の場に登場した際の姿に似通っていた。
特に注目されたのは、キム総書記と肩を並べるほどの身長に成長していた点である。娘は2013年頃に生まれたと推定され、2022年11月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」の発射時に初めて公の場に姿を見せた。当時は幼い子どものイメージが強かったが、わずか3年余りで大きく成長したことになる。
進水式終了後、娘はキム総書記の腕に手を添え、駆逐艦内部を見学するなど、すべての行事に同行した。また、時折父親に耳打ちする姿も見られた。
娘は15日に開かれた火星地区の第3段階・1万世帯住宅竣工式でも、先に住民に手を差し出してスキンシップを図るなど、以前とは異なる行動を見せた。2023年の海軍節行事では、歓声を上げる兵士たちに驚いた表情を見せたり、緊張した様子で自らの服を握りしめる姿も見られたが、現在は堂々とした振る舞いが目立つ。
これらの変化は、北朝鮮内部で娘の存在感が高まっていることの証左とみられている。現時点で彼女が4代目世襲の後継者であるかは明らかではないものの、指導者に準ずる教育を受けてきた結果との分析がある。
娘の活動範囲が広がる一方で、リ・ソルジュ氏の公の場での姿は著しく減少した。リ・ソルジュ氏は娘登場初期には娘を見守る姿を頻繁に見せていたが、昨年1月の新年祝賀公演以降、1年5カ月以上公の場に現れていない。
韓国政府は、リ・ソルジュ氏の身辺に特異な動きはないと判断している。リ・ソルジュ氏の表舞台からの後退は、政治的立場の変化とは関係ないとの見方が支配的である。
専門家らは、リ・ソルジュ氏の沈黙が、後継者の可能性を持つ「白頭血統」娘を際立たせるための意図的な戦略であると指摘する。リ・ソルジュ氏と並んで登場すれば娘の「幼い子ども」というイメージが固定化されかねず、これを避けるためだという。また、まだ十代前半にすぎない娘を「ファーストレディ」のように演出するのも、計算された宣伝戦略とみられている。
さらに、 リ・ソルジュ氏のみならず、キム総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)党副部長も最近は北朝鮮メディアの報道にほとんど登場していない。彼女は引き続きキム総書記の公務を補佐しているとみられるが、映像や写真では常に「フレーム外」に置かれている。最高指導者の直系と傍系を明確に区別するための措置と考えられる。
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