
北朝鮮で、軍事教育は軍学校にとどまらず、外国語に特化した中等教育機関でも進められている実態が明らかになった。戦争や核を賛美する宣伝ポスターに、物理や数学の公式を組み合わせて掲示するなど、若年層への“軍国主義”の刷り込みが進められている。
アイルランド出身で登録者169万人を誇るユーチューバー「Andrea&Lewis」は4月21日、ショート動画を公開した。それによると、「Andrea&Lewis」が今年2月に訪問した「羅津外国語学校」では、学校の廊下に戦争関連のポスターが多数掲示されていた。
教室へ向かう階段の壁には「角度をつけて発射された物体の運動」と題したポスターが掲げられ、中央には緑色の戦車のイラスト、その周囲には飛距離を角度に応じて計算する数式が並んでいた。
また、核爆発を連想させるイラストに「結合エネルギー」「非結合エネルギー」といった物理学の公式を添えたポスターも確認された。
別の壁面には英会話練習用の文章がペイントされており、登場人物AがBに将来の夢を尋ね、Bが「私は軍人になりたい(I want to be a soldier.)」と答える内容だった。こうした描写から、外国語学習においても軍事的価値観を盛り込んでいることが読み取れる。
羅津・先鋒地域は、北朝鮮が初めて設定した自由経済貿易地帯。先代最高指導者のキム・ジョンイル(金正日)総書記の誕生日にあたる「光明星節」(2月16日)に合わせて外国人観光が一時的に許可された。しかし約3週間後には突然中断されている。
このユーチューバーは、観光中に撮影した羅津外国語学校の訪問記を30秒程度のショート動画3本に編集し、3月末から順次公開した。動画内では生徒が流暢な英語で、同校には11歳から17歳の生徒が通っていると紹介した。
このような教育環境は、北朝鮮特有の“軍国主義体制”の一環とされる。統一研究院が発行した報告書「北朝鮮住民の軍隊生活」によれば、北朝鮮では「軍隊と民間の一体化」が軍事体制化を作り出す基本原理とされている。
軍事的価値観の浸透は、家庭や友人関係、学校、工場、農村など、あらゆる社会空間に及んでおり、キム・ジョンウン(金正恩)政権に入って以降、その傾向はさらに強化されている。
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