2025 年 4月 21日 (月)
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税金1兆ウォン投入の「韓国製」高精度地図データ、グーグルに流出の危機…「デジタル主権」揺らぐ国産産業への打撃

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米グーグルが韓国政府に対して1対5000縮尺の高精度地図データの国外持ち出しを申請したことで、論争が拡大している。表向きは「韓国での地図サービス向上」を目的としているが、実際には自動運転・デジタルツイン・AR(拡張現実)といった未来産業における主導権確保が本質との見方が強い。

国会立法調査処が12日に公開した内容によると、米通商代表部(USTR)は先月発表した年次貿易障壁報告書で、韓国の地図データ持ち出し制限を「デジタル貿易障壁」と名指しで批判した。報告書の発行時期はグーグルが韓国政府に申請書を提出した直後で、米政府を後ろ盾に圧力を強めている格好だ。

一方、韓国国内では、国産地図アプリの利用者数が圧倒的な首位を維持している。モバイルデータ分析会社IGAWorksによれば、今年3月時点で国内地図アプリの月間アクティブユーザー(MAU)1位は「ネイバー地図」。グーグルマップはティーマップ、カカオマップに続き4位にとどまっている。

この理由として、グーグルマップが韓国内では機能が限定されている一方で、ネイバー地図やカカオマップは位置情報共有機能やローカル情報管理など、実用的な付加機能を備えている点が挙げられる。

グーグルは、韓国で本格的に地図サービスを展開するには1対5000の高精度データが不可欠だと主張している。これは、50mの距離を地図上で1cmに換算し、路地の隅々まで判別できる精密さを持つ。

だが韓国政府は、国家安全保障の観点から「国内にデータセンターを設置すること」を条件としてきた。しかし、グーグルは「グローバルサービスの運営上、海外にサーバーを置く方が安定的だ」とし、これを拒否している。

韓国政府は、海外サーバーに保存された地図データに対して主権が及ばず、迅速な修正や管理が難しくなると懸念している。また、グーグルが日本には自社のデータセンターを設けている事実から「韓国軽視」との声も出ている。

加えて、韓国政府は1966年から累計1兆ウォン(約1100億円)超の税金を投じて高精度地図データを整備してきた経緯があり、これを十分な納税もしないグーグルに渡すことは「逆差別」だとの批判もある。

ネイバー、カカオといった国内IT企業は、この地図データを活用して独自サービスを展開し、年間数千億ウォンの法人税を納付している。たとえばネイバーは昨年、法人税として3902億ウォンを納付したのに対し、グーグルは2023年にわずか155億ウォンにとどまった。しかもグーグルは海外にインフラを構えていることを理由に、韓国内の売り上げを過少に計上しており、2020年には国税庁から約5000億ウォンの追加課税処分を受けたが、これに不服として訴訟を起こしている。

今後、グーグルがこのデータを活用して韓国内で新たな収益を上げても、法人税として韓国に還元されない可能性が高く、地元中小企業への圧迫も懸念される。

業界関係者は「グーグルの地図API利用料は、国内事業者と比べて約10倍にも上る」と指摘し、「同じ条件で事業を展開されれば、地域広告や注文・予約手数料などが高額になり、国内中小業者が苦境に立たされる可能性がある」と懸念を示した。

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