
「僕は極右です。むしろ誇らしい。極右であることは“しっかり生きている証”ですから」
3月21日、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領(当時)の弾劾審判を控えたある日のソウル市麻浦区。30歳の大学生、パク・ヒョンギュさんはこう語った。西江大学に在学中のパク・ヒョンギュさんは「ユン大統領による12月3日の非常戒厳令の発動は正当だった」と語り、何度も光化門の弾劾反対集会に足を運んだという。
韓国ギャラップが3月に発表した世論調査によると、18〜29歳のうち56%が弾劾に賛成、25%が反対と答えており、同世代で「ユン支持」を公言するのは少数派だ。
しかし、パク・ヒョンギュさんや25歳の釜山大学生キム・ソンテさんら“愛国青年”は「非常戒厳令は妥当だった」と語り、その根拠をユーチューブ動画から得ていた。
◇「ユーチューブが真実」…過激主張を“日常”として吸収
パク・ヒョンギュさんは「戒厳令は国民に“インパクト”を与えるために必要だった」と強調したうえ「むしろ国会の弾劾こそが違法だった」と主張した。キム・ソンテさんも「韓国は現在、準戦時状態」としたうえで「国会議員に国家保安法の前科者が多すぎる」と強調した。
彼らは共通してユーチューブの政治チャンネルを日常的に視聴しており、メディアよりもユーチューブを「信頼できる情報源」として認識しているという。
「不正選挙は99%真実だと思う」と語るパク・ヒョンギュさんは、各種陰謀論や選挙制度への不信もユーチューブ経由で吸収している。
◇フェミニズムへの嫌悪感が“政治的右傾化”の出発点
2人とも、自らの政治的右傾化の背景として「フェミニズムへの反発」を挙げた。
キム・ソンテさんは「女性も男性も同じように苦労しているのに、女性だけを社会的弱者として扱い“分断”を煽る政治には反発を感じた」と述べ、パク・ヒョンギュさんは「フェミニズムは共産主義の手段だ。社会を混乱させて支配するためのものだと思っている」と語った。
◇「公正な競争を」求めつつも“極右”への距離感に違いも
両者に共通していたのは「公正な競争環境の整備」や「青年層の機会拡大」への強い要求だった。だが、“極右”というラベルに対する受け止め方は異なった。
パク・ヒョンギュさんは「自分は極右」と誇らしげに語ったのに対し、キム・ソンテさんは「極端な思想は左右問わず避けるべきだ」として「極右を自称するのは適切ではない」と慎重な立場を示した。
◇ユン前大統領の再登板は?…「ありえない」「期待している」意見割れる
4月10日に憲法裁判所がユン氏を大統領職から罷免した後、記者は再び2人に話を聞いた。結果に対しては「残念だ」との声で一致したものの、今後の保守陣営の進むべき道については異なる意見を示した。
キム・ソンテさんは「憲法裁判官が全会一致で罷免を決めたのだから、ユン氏を再び担ぎ出すのは民主市民として好ましくない」と語り、「立法府に対抗できる別の人物に保守が結集すべきだ」と述べた。
一方、パク・ヒョンギュさんは「ユン前大統領の再出馬が法的に可能かは微妙だが、今は側近の弁護士の意見を待っている。保守陣営が一致団結しなければならない」と語った。
今、彼らにとってユーチューブは“思想”の供給源であり、フェミニズムは“警戒対象”であり、ユン・ソンニョル氏は“象徴”だ。
極端な思想に至るまでの背景には、教育、メディア環境、政治的失望、世代間の断絶など、社会全体が抱える複雑な問題が潜んでいる。いま求められているのは、“敵”として排除することではなく、対話と理解の努力である。
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