
韓国・仁川永宗島にある「モヒガン・インスパイア・エンターテインメント・リゾート(Mohegan Inspire Entertainment Resort)」の経営権が米国の投資ファンド「ベインキャピタル(Bain Capital)」に移った。韓国政府が19年ぶりに許可した外国人専用カジノ事業だったが、期待を下回る業績となり、ベインキャピタルによる再建が注目されている。
ベインキャピタルがインスパイアの親会社である「MGEコリア・リミテッド」の100%の株式を取得した。もともとインスパイアの運営会社である米国のモヒガン社がベインキャピタルからMGEコリアの株式を担保に2億7500万ドルを借りていたが、返済が滞ったため株式が移転されることになった。これにより、社名も「インスパイア・エンターテインメント・リゾート」に変更された。
インスパイアは2024会計年度(2023年10月~2024年9月)の売り上げが2190億ウォンだったのに対し、営業損失は1564億ウォンに達した。2023年3月の開業時には、韓国内の外国人専用カジノに強力な競争相手となると期待された。しかし、営業開始後は想定を下回る結果となった。開業式には当時の文化体育観光相が出席し祝辞を述べるなど注目を集めたが、経営の実態は厳しかった。
今回の経営権移転について、業界関係者の間では「予想通りの展開」との見方が多い。カジノ産業ではVIP顧客を中心とした収益モデルが一般的だが、インスパイアは大衆向けの集客に力を入れすぎた。通常、ホテルやリゾート施設はVIP客をカジノに引き留めるための手段に過ぎないが、インスパイアはこの基本原則を守れなかった。
没入型エンターテインメントエリア「オーロラ」や1万5000席規模の多目的室内アリーナは話題を呼び、数百人規模の来場者を集めた。広告宣伝費には約190億ウォンが投じられたが、来場者の多くは施設を見学するだけで、ホテル宿泊やカジノ利用にはつながらなかった。実際の客室稼働率は47~83%にとどまった。
業界関係者は「永宗島には日帰りで訪れる客が圧倒的に多い。レストランではなくフードコートやコンビニを利用するため、施設側の収益につながらなかった」と指摘する。「結局、カジノが主要な収益源であるべきだったが、韓国のカジノ市場の難しさをモヒガン社が理解していなかったのではないか」と分析した。
ベインキャピタルが今後どのような戦略をとるのかについては意見が分かれる。ベインキャピタルは「レイク・コモ・ホテル(Lake Como Hotel)」や「キュー・ホテルズ(Qhotels)」など、さまざまなホテル・リゾートに投資した実績を持つ。また、韓国市場でも「(Carver Korea」「Hugel」「Schwan’s」などの企業に投資し、グローバル展開を支援した経験がある。
ベインキャピタル関係者は「現時点では具体的な投資計画は決まっていないが、カジノライセンスを取得してわずか11カ月の段階であり、成長の可能性が高いと見ている」とコメントした。
ただし、業界では大規模な追加投資には慎重な姿勢を示すとの見方もある。韓国文化観光研究院のチョン・グァンミン研究委員は「ベインキャピタルは経営の専門性は高いが、カジノ運営のノウハウがあるかどうかは未知数だ。当面は状況を見守る必要がある」と指摘している。
(c)MONEYTODAY