2025 年 2月 12日 (水)
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職場いじめ1回でも処罰?…韓国政府が「オ・ヨアンナ法」制定に意欲

ソウル市内の雇用福祉プラスセンター(c)NEWSIS

韓国で、職場いじめが1回でも深刻であれば処罰可能とする法律が制定される見通しとなった。政府・与党が処罰基準を強化する特別法、通称「オ・ヨアンナ法」の制定に意欲を示したためだ。ただ、これまで職場いじめの判断基準が曖昧で、通報件数が増加する中で「継続性・反復性の要件を追加すべきだ」との主張も根強い。

与党「国民の力」と雇用労働省は9日、「オ・ヨアンナ法」の制定方針を明らかにした。この法律は「重大な職場いじめ」が1回でも発生した場合に処罰可能とする内容が柱となる。この動きは、MBCテレビの気象キャスターだったオ・ヨアンナさんが職場いじめを理由に死亡した問題を受けたもの。

注目すべきは「1回でも処罰可能」とする点だ。これは従来の政府方針と矛盾する部分がある。これまで政府・与党・経済界は「職場いじめの判断基準に継続性・反復性の要件を追加すべきだ」と主張してきた。現在の法律では基準が不明確であり、行政負担の増大や職場内の不必要な対立を招く可能性があるためだ。

現行の労働基準法では、職場いじめを「地位や関係の優位性を利用し、業務上の適正範囲を超えて他の労働者に身体的・精神的苦痛を与え、労働環境を悪化させる行為」と定義している。しかし、通報があっても「違法性なし」と判断されるケースが少なくない。雇用労働省の職場いじめ通報処理統計(過去5年間)によると、処理された案件4万3446件のうち、「違法性なし」と判断されたケースが1万2805件(約30%)に上った。

また、同省は昨年4月、韓国労働法学会に研究を委託し、報告書を受け取っている。この報告書では「1回の加害行為や一時的な加害行為で、今後繰り返される可能性がない場合は、職場いじめと認定しないのが適切」との見解が示されていた。キム・ミンソク雇用労働次官も昨年10月の国政監査で「現場では職場いじめの基準が曖昧で行政負担が大きいとの声が多い。継続性・反復性の基準を設けるのが妥当と考える」と発言していた。

しかし、オ・ヨアンナさんの事件を受け、政府は職場いじめの処罰範囲を拡大する方向へと舵を切った。

この動きに対して「通報のハードルが下がることは歓迎すべきだ」とする肯定的な意見と、「すでに複雑な職場いじめ問題がさらに混乱する」とする懸念が交錯している。

韓国労働組合総連盟のイ・ジヒョン報道官は「処罰強化により職場いじめに対する警戒心が高まり、予防効果が期待できる」と評価する。一方、「職場いじめ119」のパク・ソンウ社会保険労務士は「処罰が厳しくなるほど当事者の納得が得られず、職場の対立が拡大する可能性がある」と指摘する。また「職場いじめでは加害者と被害者の立場が入れ替わることもある。無理に罰するのではなく、職場文化の改善や被害者のケアに重点を置くべきだ」と主張している。

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