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韓国のエンジェル投資生態系が揺らいでいる。ベンチャーエコシステムの最下層で、初期スタートアップを発掘する役割を担ってきたエンジェル投資家(創業間もない企業に資金を供給する富裕な個人)が減少しているためだ。エンジェル投資が縮小したことで、創業3年以下の初期スタートアップへの投資が急減し、これはベンチャーキャピタル(VC)・プライベートエクイティ(PEF)の投資縮小や、新規株式公開(IPO)市場の冷え込みといった悪循環を生んでいる。
エンジェル投資支援センターの統計によると、現在、初期スタートアップを発掘・育成する専門個人投資家は233人。2023年末の268人、昨年末の241人よりも減少した。
専門個人投資家は、弁護士・会計士・弁理士・投資業界経験者など特定の経歴を持つ者が、初期企業に3年間で1億ウォン(約1100万円)以上を投資すれば資格を得ることができる。韓国政府はエンジェル投資家の育成を目的として2014年7月に専門個人投資家制度を導入したが、10年以上経った今でもその数はわずか200人を超える程度にとどまっている。
個人投資家を中心に資金を集めてスタートアップに投資する個人投資組合(エンジェルファンド)も規模が縮小している。2022年には994件あったエンジェルファンドの数は、2023年には925件に減少。昨年上半期には430件にとどまり、前年の46.4%にまで落ち込んだ。ファンド数が減ったことで、組成額も2022年の6880億ウォンから2023年の5473億ウォンへと減少し、昨年上半期のエンジェルファンド組成額は2622億ウォンと、前年の50%にも満たなかった。
ベンチャーファンドへの個人投資の比率も低下傾向にある。中小ベンチャー企業省によると、昨年9月時点でベンチャーファンドの出資者のうち個人投資家の比率は10.6%だった。この比率は2021年の16.2%から、2022年13.1%、2023年11.2%と毎年大きく減少している。
初期スタートアップを支援してきた個人投資家の投資意欲が低下したことで、創業3年以下の企業への投資額も減少している。2022年には3兆3954億ウォンだったが、2023年には2兆6808億ウォン、2024年9月時点では1兆5606億ウォンと急減している。
国内のエンジェル投資が縮小している理由として、個人投資家を市場へ引き込む支援策や制度が不十分であり、投資資金の回収が容易ではない点が挙げられる。また、新型コロナウイルスのパンデミック以降の高金利基調により、資金が他の投資先へ流れたことも要因となっている。
韓国エンジェル投資協会のコ・ヨンハ会長は「期限切れとなったエンジェル投資マッチングファンド(エンジェル投資を受けた企業に対し1~1.5倍の追加投資をする制度)を復活させ、スタートアップの投資資金を中間回収できる市場環境を整備すべきだ」と指摘したうえ「世界経済を牽引する米国の力は、グーグルやアップル、テスラといったスタートアップから生まれたものだ。韓国もスタートアップ生態系の活性化に力を注ぐべきだ」と提言した。
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