中国最大の電気自動車(EV)メーカーであるBYD(比亜迪)が韓国の乗用車市場に本格参入したが、消費者の反応は冷ややかだ。それでも韓国の自動車業界は、中国企業が持つ先進的な技術力に注目し、今後の動向を警戒している。
韓国市場では現在、現代(ヒョンデ)自動車、起亜(キア)、テスラがEV市場を支配している。昨年のシェアは、現代(ジェネシスを含む)が30.9%、起亜が28.5%、テスラが20.3%で、3社合計のシェアは約80%に達する。この「3強構図」が続く中、BYDが韓国市場に定着できるかは未知数だ。
消費者の信頼獲得は課題だ。昨年9月のコンシューマーインサイトによる調査では、韓国の新車購入希望者の90%が「中国ブランドのEVは購入しない」と回答。その理由としてバッテリーや品質への懸念が挙げられた。さらに40%が「どんなに安くても中国製EVは買わない」と述べた。こうした消費者心理は日本市場でも顕著であり、BYDの昨年の日本販売台数は約3000台にとどまった。
それでも業界が中国の動向を注視する理由は、急速な技術進歩にある。現代自動車のキム・チャンファン副社長は、最近の講演で「中国はもはや追い上げる存在ではなく、我々が追いつけないほど先を行く存在になるかもしれない」と警告。規模の経済と豊富な技術人材がその背景にあると指摘した。
特に注目されるのが、中国企業による自動運転やソフトウェア中心の車(SDV)への転換だ。BYDは昨年11月、高性能SUV「レオパード8」に初めて華為技術(ファーウェイ)の自動運転システムを搭載。このような技術提携を武器に、中国メーカーは輸出を加速させている。
昨年の電気自動車(BEV)販売台数で、BYDは176万4992台を記録し、テスラ(178万9226台)に次ぐ世界第2位となった。この勢いを背景に、韓国市場でもBYDが存在感を高める可能性は否定できない。
業界関係者は「中国メーカーは激しい内需競争の中で、ソフトウェアを活用してユーザー体験を高めている。EVと同様、SDVが主流になる日はそう遠くない」と述べ、韓国メーカーにもソフトウェア開発への取り組みを求めた。
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