韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が15日、逮捕された。「非常戒厳」宣布から43日目のことだ。現職大統領が捜査機関に逮捕されたのは憲政史上初めて。ユン大統領が非常戒厳を宣言した日から現在までの高位公職者犯罪捜査処(公捜処)・警察・検察の捜査日誌を振り返る。
「私は大統領として血を吐くような思いで国民の皆様に訴えます。(中略)私は北朝鮮共産勢力の脅威から自由大韓民国を守り、我々の国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一掃し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣言します」
ユン大統領は昨年12月3日午後10時28分ごろ、非常戒厳を宣布した。キム・ヨンヒョン(金龍顕)国防相(当時)は戒厳宣布直後に全軍主要指揮官会議を開き、パク・アンス陸軍参謀総長(同)を戒厳司令官に任命した。パク・アンス氏は戒厳宣言の約1時間後、午後11時25分ごろに戒厳司令部布告令を発表した。その間、戒厳軍約1600人がソウル・汝矣島の国会と京畿道果川市(クァチョンシ)の中央選挙管理委員会の掌握を試みた。
国会は翌4日午前1時ごろ、戒厳解除決議案を在席議員190人全員の賛成で可決した。戒厳宣言から約2時間30分後という迅速な措置だった。ユン大統領は国会の議決後、約3時間30分後の午前4時26分に非常戒厳解除を発表した。非常戒厳事態は約6時間で幕を閉じた。
【12月4日】捜査機関はユン大統領やキム国防相、パク参謀総長らを内乱および職権乱用権利行使妨害の容疑で捜査すべきだと内容の告発状を受理。告発人は、祖国革新党、正義党などの野党や、全国民主労働組合総連盟委員長、民主社会のための弁護士会など
【12月5日】検察・警察と公捜処はユン大統領らを容疑者として捜査に着手。事件はそれぞれ、ソウル中央地検公共捜査1部、警察庁国家捜査本部安保捜査団、公捜処捜査4部に配分
【12月6日】検察は非常戒厳事件を捜査するため、ソウル高検長を本部長とする特別捜査本部(特捜本)を立ち上げ。警察も専担捜査チームである特別捜査団(特捜団)を編成
【12月9日】法務省は公捜処の要請により、ユン大統領の出国を禁止
【12月11日】特捜本はユン大統領に「15日までにソウル中央地検に出頭して取り調べを受けるように」という出頭要求書を送付
同日、公捜処と警察、国防省調査本部による合同捜査本部設立。合同捜査本部は大統領府内の国務会議室、警護処、101警備団、合同参謀本部地下にある統制指揮室の4カ所を対象に家宅捜索を試みたが、警護処が立ち入りを阻止し、任意提出の形で一部の資料を受け取るにとどまった。
【12月15日】ユン大統領は検察の1回目の召喚通知に出頭せず
【12月16日】検察はユン大統領に「21日までに召喚調査を受けるように」という2回目の出席要求書を送付。同日、公捜処もユン大統領に「18日に調査を受けるため出頭せよ」と1回目の召喚通知
【12月17日】合同捜査本部はチョ・ジホ警察庁長の秘密電話(暗号化された通信端末)サーバーを確保するため、大統領警護処への家宅捜索を試みたが失敗(2回目)
【12月18日】検察はユン大統領の捜査を公捜処に移管。公捜処は8日と13日に検察と警察に事件の移管を要請しており、その結果、検察・警察・公捜処が競っていたユン大統領の捜査を公捜処に一本化。この日も合同捜査本部は大統領警護処に対して家宅捜索を試みたが失敗(3回目)。ユン大統領は公捜処の1回目の召喚通知にも出頭せず
【12月20日】公捜処は「25日までに出頭せよ」と2回目の召喚通知
【12月25日】ユン大統領は公捜処の2回目の召喚通知にも出頭せず
【12月26日】公捜処は「29日までに出席せよ」と事実上最後通告となる3回目の召喚通知を発表
【12月27日】合同捜査本部は大統領「安家」と大統領府に対する家宅捜索。警護処の非協力で安家の防犯カメラ資料確保に失敗。4回目の大統領府家宅捜索が不発
この日、検察はキム前国防相を内乱罪で逮捕・起訴し、起訴状でユン大統領が「非常戒厳」宣布を主導したと詳述。検察によると、ユン大統領は▽国会封鎖と戒厳解除議決の妨害▽主要人物の逮捕部隊運営▽中央選挙管理委員会の占拠とサーバー搬出の試み――を指示した容疑を受け、これは憲政秩序を乱す行為と認定
【12月29日】ユン大統領は公捜処の3回目の召喚通知にも応じず
【12月30日】公捜処はソウル西部地裁にユン大統領に対する逮捕状を請求
【12月31日】裁判所はユン大統領に対する逮捕・捜索令状を発付。有効期間は7日間。現職大統領への逮捕状発付は憲政史上初
【1月3日】公捜処はユン大統領に対する最初の逮捕状執行を試みたが失敗
【1月5日】公捜処が警察に逮捕状執行を委任する内容の公文を送付
【1月6日】警察が委任には法的欠陥があると判断し、事実上拒否の意向を示すと、公捜処はこれを撤回
【1月7日】ソウル西部地裁は公捜処が再請求したユン大統領に対する逮捕・捜索令状を再び発付
【1月15日】合同捜査本部はユン大統領に対する2回目の逮捕状を執行
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